バスでも、飛行機でも。いつも隣の席に座って、日本代表のチーム状況について思いをぶつけ合った。41歳の今もジュビロ磐田で現役を続ける守護神が「親愛なる友」と過ごした喜びと葛藤の日々を明かす。(原題:[戦友が語る素顔]川島永嗣「悩みも傷みも、胸の内に秘めて」)
寂しい気持ちが、心に溢れた。
川島永嗣が一つ年下の盟友から直接、引退の可能性を「ぽろっと」告げられたのは昨年12月、Jリーグへの帰還が決まる前のことだった。
「一緒にご飯を食べていたときに『今シーズンまでかな』という感じで。今でもあれだけのパフォーマンスを出せるのであれば、僕なら全然やれるって思うタイプ。だから『まだいけるでしょ』と。でも彼のなかで感じるものがあったんじゃないですかね。まあマコっぽいな、と感じました」
お互いに干渉はしない。多くの言葉も要らない。認め合い、尊重する関係性が長谷部誠との間にはある。日本代表でも、欧州でもずっとそうだった。
今年4月、今度は「さらっと」引退の決断を伝える連絡をもらった。返す言葉はお疲れさま、だけで十分だった。
2人の間にウエットな感情はない。ならば川島が抱く寂しい気持ちの正体とは一体、何なのか――。
「絡みづらい」相手から、陰からフォローする存在に。
長谷部が引退を発表した際、川島はSNSを通じてコメントを寄せた。冒頭、このように記している。
〈親愛なる友よ。思い返すともう20年以上もの付き合いか。この日が来るのを心のどこかで避けてたけど〉
出会いはU-18日本代表にさかのぼる。最初からウマが合ったわけじゃなかった。単にチームメイトの一人というだけだった。
「相手をあざ笑うようなスルーパスを出したりドリブルで切り裂いたりして満足するような、普段からそういう感じがあったんでちょっと絡みづらいくらいに思っていましたよ(笑)。監督がそれを見てくれなかったり、うまくいかなかったりすると“なんだよ”みたいになっていましたから」
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photograph by Takuya Sugiyama