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「本当にGKの声は味方に届いているのか?」ジュビロ磐田・川島永嗣と“もう1人の神”が示した「言葉の価値」《サッカー新連載スタート》

2024/05/23
今季から磐田に加入した川島。41歳となっても卓越した技術とチームを引き締める声は健在だ
速報記事やSNSのポストがWeb上に溢れる中、試合を取材して書く「マッチレビュー」にはどんな可能性が残されているのか。長年日本サッカーを第一線で取材している編集部・松本宣昭が、そんな自問自答をしながら綴っていく連載コラムがスタートします。NumberPREMIER会員限定で、月に1回程度掲載予定、連載名は<最後尾からのマッチレビュー>。速さを捨てた、切り口勝負の企画。ご期待下さい。

 ゴールキーパーの声は、神の声――。

 サッカーの世界では、昔からずっと使われてきた格言だ。仕事場は自陣のゴール前。最後方からピッチ全体を見渡せるからこそ、GKによる指示が味方を助け、神の一声になる。高校生の頃、187cmの長身だけが取り柄のGKだった筆者も、監督からその大切さを口酸っぱく指導され、いつも声をからしていた。

 ただ、社会人になって、記者としてサッカーを取材するようになって、こうも思うようになった。

 高校の土のグラウンドならまだしも、プロの舞台でも本当にGKの声は味方に届いているのだろうか。何万人もの観衆が詰めかけるスタジアムでは聞こえないんじゃないのか、と。

ジュビロ磐田のゴール前に「神」はいた。

 5月3日、3万8945人を集めた日産スタジアムで、この疑問は払拭された。ジュビロ磐田のゴール前に、「神」はいた。その声を聞いたのは、最終ラインの中央で守備陣を束ねた森岡陸だ。

「今日も永嗣さんはスーパーセーブをしてくれて。しかもプレーだけじゃなくて、声でも毎試合、チームを引き締めてくれている。そこの部分は本当に助けられています」

 川島さん、ではなく、永嗣さん。兄貴の風格漂う川島永嗣には、やっぱりこの呼び名が似合う。4度のワールドカップで日本代表に魂を吹き込んだ守護神は、今年、13シーズンにわたる欧州での旅を終えてJリーグに復帰した。3月に41歳を迎えたが、神は健在だった。

 この日の対戦相手、横浜F・マリノスはFWに強くて速いアンデルソン・ロペス、エウベル、ヤン・マテウスのブラジル人トリオを並べた。彼らは磐田が攻め込んでいる最中も前線に居残って、虎視眈々とカウンターの機会を狙っていた。

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photograph by Takuya Sugiyama

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