編集者として、公私混同を告白します。9年前の冬、名古屋市内のホテルの一室で取材対象者にたった一度だけお願いしたことがある。
「一緒に記念撮影、いいですか?」
仕事に私事を持ち込むべからず。それは百も承知。でも、欲望に打ち勝てなかった。なぜなら目の前に、この2人がいたから。
川口能活と楢﨑正剛。
学生時代、187cmの長身だけが取り柄のGKだった筆者にとって、憧れの人たちだ。当時は川口モデルのスパイクを履いて、楢﨑モデルのグローブをはめてボールに飛びついた。汚れるのが嫌だから、雨でグラウンドがドロドロの日は部室に温存したけれど。
そんな2人の初対談でインタビュアーを務めた。取材を終えてもまだ緊張でガチガチ。メンタルの弱さを露呈する編集者を間に挟んで、レジェンド守護神たちは笑顔で写真に納まってくれた。もちろんその1枚は、宝物になった――。
取り柄がいくらでもあるプロのGKにだって「憧れの人」はいる。
6月1日、J1リーグ第17節・鹿島アントラーズvs.横浜F・マリノス戦。その開始数時間前、鹿島のゴールマウスに立つ25歳・早川友基は、スターティングメンバー表を見て心躍らせた。相手の先発リストの一番上に、この名前があったからだ。
飯倉大樹。
早川にとっての、憧れの人だ。
「僕は小学生の頃からマリノスの下部組織で育ちました。GKコーチに毎日指導してもらいながら、シュートへのステップだったり、キャッチの技術を学んできた。GKとしての総合的な能力は、マリノスで培われたんです。その当時から、マリノスを背負ってゴールマウスに立っていたのが飯倉選手。ずっとリスペクトしていましたし、『ああいうふうになりたい』と思っていました」
「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています