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「滑りながら音を奏で、会場をコントロールできる存在」俳優・石丸幹二が語る羽生結弦『オペラ座の怪人』の魅力<インタビュー/2022年>
2024/02/14
ソチ五輪翌シーズンのフリーで演じた『オペラ座の怪人』で、羽生は主人公・ファントムやその世界観をどのように感じたのか。ミュージカル界をはじめ幅広い分野で活躍する俳優がその思いに寄り添った。(初出:Number PLUS FIGURE SKATING TRACE OF STARS 2021-2022シーズン総集編石丸幹二 「オペラ座の“風”に乗って」)
羽生結弦選手と初めて会ったのは、僕が歌のパフォーマンスで参加した昨年末の全日本選手権のエキシビションの時です。丁寧なご挨拶をいただいて、なるほど皆さんがおっしゃる通りの人なのだなと思ったのが第一印象でした。リハーサルで僕がどう歌うのかを気をつけて聴いた上で、本番ではちゃんと曲のクライマックスを捉えてジャンプする。こちらも氷上で歌うのは初めてだったので、とても新鮮で刺激を受けました。
僕は25歳の時に劇団四季に入り、ミュージカル『オペラ座の怪人』で舞台デビューをしました。ヒロインの恋人ラウル役でした。
彼の凄さは、音を奏でながらスケーティングをすること。
原作をよく知っている立場で羽生選手の2014─2015シーズンのフリー『オペラ座の怪人』を見て思うのは、彼はプログラムの中で物語を表現しているということ。構成されている音楽によって、キャラクターや場面を演じ分けているかのように感じました。僕の場合はラウルとして役を生きていたので、それ以外の役作りはないのですが、羽生選手は流れてくる音楽が表す登場人物に常に寄り添っている印象を受けました。
その時の羽生選手は、自らの滑りが生み出す“風”の感覚というものを、彼自身が風に乗っているかのごとく、体の全てを使って表現していました。リンクと劇場の違いはありますが、僕も『オペラ座の怪人』の舞台を何年も経験するうちに、「この役にうまく乗れるようになったな」と感じることがありました。そういった意味で、相通ずるものがあるのかもしれません。
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photograph by Tsutomu Takasu/HIRO KIMURA