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《圧倒的大差で悲願の金メダル》ネイサン・チェンが秘めた闘志と「プロフェッショナル」としての覚醒<2022北京五輪プレイバック>

2022.2.10 Beijing Winter Olympics
北京五輪での圧巻の初戴冠は、平昌の地で約束されていたのかもしれない。手痛い挫折ゆえに以後の連勝があり、本番直前の失敗が悲願達成の伏線となった。すべてを見てきたコーチへの独占取材で浮かび上がる、圧勝劇の内実。(初出:Number PLUS FIGURE SKATING TRACE OF STARS 2021-2022シーズン総集編[悲願の金メダルの裏側で]ネイサン・チェン「プロフェッショナルへの覚醒」)

 2月の北京オリンピックで、アメリカの男子シングル選手として史上7人目の金メダリストになったネイサン・チェン。団体戦のSP、個人戦のSPとフリーを通して大きなミスなく滑り通し、4年前の平昌オリンピックの雪辱を果たした。

「細かいことはあるけれど、全体としてここでの自分の演技には、とても満足しています」。演技後に、落ちついた表情でそう感想を述べたチェン。

 平昌以後の4年間ずっと表彰台に上り続けてきたが、北京のメダル授与式ではこれまでのどの大会とも違った、一点の曇りもない晴れやかな笑顔を見せた。

「自分がここまで来られるとは思わなかった。今の気持ちは言葉では言い表せません。この感情が自分の中に染み渡るまで、長い時間がかかると思います」

 SP113.97、フリー218.63でトップを保ち、総合332.60は2位の鍵山優真に22ポイント以上の大差をつけての圧勝だった。

「文句なしの優勝」を目指し、プロフェッショナルとして演技。

 この高得点を出せた理由の一つは、2022年1月の全米選手権からSPの後半に組み込んだ、4回転ルッツ+トリプルトウループのコンビネーションジャンプにあった。このコンビネーションを跳んだのは全選手の中で彼と中国のボーヤン・ジンの二人だけ。後半に入れたのはチェンだけだった。北京ではこのエレメンツだけで、何と21.21というポイントを叩き出した。

「もちろんリスクはありました。でも我々は、誰が見ても文句なしの優勝を目指していた。だからSPで大きなリードを取るのは、大事なことだったんです」

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photograph by AFLO

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