“自主性”という言葉をこれほど耳にした年があっただろうか―。
緊急事態宣言下の取り組みは大学によって異なったが、ほとんどの大学が活動を制限された。部が一時的に解散になったチームもある。寮に留まることができても、全体練習は控えざるをえなかったチームも多かった。多くの学生ランナーは、自ら考えて、練習に取り組まなければならなかった。
今秋、大学駅伝の勢力図を大きく変えたのは明治大学だ。トラックレースでは大学トップランナーの目安とされる5000m13分台が12人、10000m28分台が15人に達し、11月の全日本大学駅伝では“3強”の一角を崩し3位に入った。“自主性”という言葉を聞いて、真っ先に思い浮かんだのも明大だった。
「鎧坂哲哉(現・旭化成)や菊地賢人(現・コニカミノルタ)ら、今、実業団の主力で活躍している明治出身の選手たちは、“自分で考えて行動できるから、手がかからない”っていろんな監督さんから聞いていたんです。それは前監督の西(弘美)さんが自主性を大事にして指導に当たってきたから。僕自身も学生の頃にそういう指導を西さんから受けたし、それが明治のカラーなので、そこは引き継いでいかなければならないと思いました」
今季で就任3年目になる山本佑樹駅伝監督は、就任当初から自主性を重んじてきた。しかし、その言葉の裏に潜む危うさにも気付いた。山本が明大のコーチに就任した'17年は、箱根予選会で敗退するなど近年では最も低迷していた時期。自主性にかこつけて自由を主張する者もいたという。そういう選手に対しては「自由の裏には責任があるんだよ」と説いて回った。一方で、なかなか結果が出ていない時期だっただけに、指導者が自主性を唱えることに不安を覚える選手も多かった。
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