史上最強とも呼ばれた“黄金世代”が卒業した。だが全日本大学駅伝では選手層の厚さを示し、準優勝。自覚と責任、危機感が彼らを戦う集団へと導いている。(初出:Number1017号[王座奪還への改革]東海大学「脱・黄金世代が 結束のしるし」)
箱根駅伝戦歴
初出場 1973年
出場回数 47回
優勝回数 1回
前回順位 2位
「ふがいない走りをしてゴメン」
全日本大学駅伝で優勝を逃した直後のことだ。7区で区間6位と苦しんだ西田壮志が4年生のLINEグループにそうメッセージを書き込むと、次々に返信が入った。
「次、頑張ろう」「オレたちは変わらずにお前たちを支えるから」
仲間の気遣いがうれしかった、と西田は顔をほころばせる。
「落ち込んだとき仲間が励ましてくれると助かりますし、あいつらのためにも次こそ頑張ろうと思える。僕らの代って今も走っている選手がすごく少なくて、13人中5人しかいないんです。8人が裏方として支えてくれているから、感謝の思いが強い。かなり仲は良い方だと思ってます」
学生スポーツは生きものだ。たった1年で驚くほどチームはその姿を変える。“黄金世代”と呼ばれ、高校時から華々しい活躍をしてきた最上級生が多くいた昨季のチームを「剛」とすれば、今季のチームの印象はずいぶんと柔らかい。その変化の象徴が、4年生たちの笑顔だろう。主将の塩澤稀夕、名取燎太、西田の3本柱が中心だが、彼らがまとう空気は太陽のようにポカポカと温かい。ライバル意識よりもおそらく、仲間意識の方が強いのだろう。
全日本で2位となり、東海大は今回も箱根駅伝の優勝候補の一角に挙げられるが、そもそもの下馬評は高くなかった。箱根駅伝準優勝メンバーから6人もの4年生が卒業し、組織は立て直しを迫られたのだ。
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photograph by Keijiro Kai