#1083
巻頭特集

記事を
ブックマークする

「新しい景色をもう一度」集大成の秋に臨むタイトルホルダーの強さを探る<横山和生が語る「歯の食いしばり方」とは?>

2023/10/26
2022年の宝塚記念でレコードタイムで見事な勝利を挙げた
「この馬がここまで連れてきてくれた――」横山和生は鞍上で見てきた光景を振り返ってそう語る。乗る者も観る者も沸かせてくれた、当代きっての逃げ馬は、クライマックスとなるこの秋に、もう一度強い姿を見せられるか。

 タイトルホルダーを管理する栗田徹が初めてこの馬を見たのは、2018年7月10日、セレクトセール当歳の会場だった。

「現役だった父(栗田博憲元調教師)が、生産者の岡田牧雄社長らといた場所に、この馬のオーナーとなる山田弘さんがいらして、私もそこにいました。お母さんのメーヴェと一緒に出てきて、顔が小さく、弾みのある歩き方で、スピードがありそうな印象でしたね。父は、牧雄社長が所有していたメーヴェを管理しており、山田さんの馬も預かっていたんです。そうした経緯があるので、授かり物というか、いろいろな縁が重なり合った結晶という感じがします」

 そう話す栗田がこの馬の素質を初めて感じたのは、2歳時の'20年夏のことだった。

「ゲート試験のあとの追い切りでした。体がグニャグニャなのに動きすぎるので、ちょっとまずいかなと思ったほどです」

 10月の2歳新馬戦で戸崎圭太を背に逃げ切り勝ちをおさめる。しかし、栗田はこのままでいいとは思っていなかった。

「私たち現場の人間は、あまり逃げ馬にはさせたくなくて、好位で我慢して抜け出す競馬を目指すものなんです。並大抵のスタミナでは逃げ馬にはなれませんからね」

 2戦目以降、ベストの戦術を模索するなか、'21年初戦の弥生賞を横山武史の手綱で逃げ切り、重賞初勝利をマークする。皐月賞で2着、ダービーで6着となったあと、秋初戦のセントライト記念で抑えて馬群に入れると前が詰まって13着に終わる。その反省を生かし、本番の菊花賞で一転して逃げの手に出ると、5馬身差で圧勝。嬉しいGI初制覇を遂げた。

会員になると続きをお読みいただけます。
オリジナル動画も見放題、
会員サービスの詳細はこちら
特製トートバッグ付き!

「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています

photograph by Yoshiharu Hatanaka

0

0

0

前記事 次記事