秋の中長距離路線を輝かせてきた、脈々と続く血の先端をゆくのがこの馬だ。父仔4代GI制覇の偉業の礎には、日本で育まれし100年の土着血統がある。父モーリスから大河を遡って見えてくるものとは。
昨年、4着に敗れた天皇賞(秋)に、ジャックドールが再び挑む。あれから1年。この春には大阪杯を逃げ切ってGI馬となった。曾祖父グラスワンダー、祖父スクリーンヒーロー、父モーリスに続く父仔4代GI制覇は、同じモーリス産駒のピクシーナイト、ジェラルディーナに次いで史上3頭目の快挙だった。
日本競馬において4代もGI勝ち馬が続いている父系は、現在のところ他に一つもない。サクラユタカオーも、シンボリルドルフも、キングカメハメハも、ディープインパクトも。みんな子孫のGI勝ちは自身から3代目までで止まっている。
そんな厳しい淘汰の荒波の中、なぜこの父系は4代にわたってGIを勝てているのか。グラスワンダー、スクリーンヒーローという決してリーディング争いをしてきたわけではない中堅種牡馬の流れから、なぜ生産界のトップを狙えるモーリスのような馬が現れたのか。そして、血を通じて受け継がれてきたものは、ジャックドールの走りの中にどんな形で生きているのか。
8代前から根付く、日本古来の「土着血統」。
モーリスを繋養する社台スタリオンステーション場長の徳武英介は、その母系に流れる日本古来の土着血統こそが、3代目と4代目の間の壁を突き破ったモーリスの「繋げる力」の源泉だと感じているという。
「モーリスの8代前の母のデヴオーニアは、社台ファームを拓いた吉田善哉さんのお父さん、吉田善助さんが戦前にアメリカから買ってきた繁殖牝馬なんです。それがその後、メジロ牧場に根付いて繋がってきて、今また種牡馬として社台スタリオンにいるというのは、すごく感慨深いですね」
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photograph by Yuji Takahashi