#1078
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「トレーニング理論や人体解剖学の書籍が並んでいた」東北高にダルビッシュ有が残した“伝説”を追う<後輩が感謝する「有さんの優しさ」とは?>
2023/08/03
WBC開幕前の宮崎キャンプで一躍話題となった“ダルビッシュ塾”。分け隔てなく優しく接するその面倒見の良さは、傍からは意外に映った。甲子園を沸かせた長身右腕は、3年時にキャプテンを務めている。果たして、どんな先輩だったのか? 宮城・東北高の後輩たちを訪ねた。
韓流ドラマ「冬のソナタ」のヨン様が大ブームになっていた2004年の春、東北高校に入学したばかりの硬式野球部の1年生部員はそれどころではなかった。
『本物だ……テレビの人だ!』
高山一輝は思わず声を上げそうになった。いまをときめくダルビッシュ有である。本隊から離れ、基礎トレーニングに励んでいた1年生のもとに、あの長身右腕の3年生がふらりと姿を見せたのだった。
心がざわつくのも無理はない。
数週間前の3月26日、センバツ初戦で熊本工を相手にノーヒットノーランを演じていた。その前年も夏の甲子園決勝に導き、常総学院に敗れはしたが、圧倒的な存在感で一躍、スターになった。一方で、人を射抜くような眼光で、ふてぶてしく、孤高のエースといった印象を醸し出していた。
雲の上の存在のはずなのに、学校のグラウンドでは不思議な空気をまとっていた。名門校にありがちな厳しい上下関係とは無縁で、マウンドで見せる威圧感もない。
あるとき、高山が「ダルさん」と呼びかけたら「有にしてくれ」と言われた。
「怖さが全然ないんです。有さんは、すごく優しい先輩で、いろいろ声をかけてくれていたし、聞いたことに対して、すぐに全部、答えてくれる方だったんです」
高山は中学時代、東京・日野ボーイズで全国大会に出場した右投手で、1年前の夏の甲子園決勝を見て入学を決めた。キャッチボール中が憧れの人の話を聞く時間になった。「いい真っすぐを投げるには下半身が大切だよ」と走り込みの重要性を説かれた。初歩的な話は次第に高度になっていく。
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photograph by Hideki Sugiyama