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「まだ首の皮一枚…」「見せましょう、野球の底力を」球史を動かした“カリスマ”の言葉学【ナベツネ「たかが選手」発言の“裏の裏”とは?】
名将の条件の一つにアジテーターであること、煽動者であることが挙げられる。あるときは理路整然とした言葉で選手を説き動かし、あるときはほとばしる情感を込めた言葉で勝利に向かって走らせる。
「まだ首の皮一枚残っている」
1958年の日本シリーズ。巨人に3連敗した西鉄の監督・三原脩が、試合後の会見で残した言葉は冷静だった。
いまではこの「首の皮一枚」という表現は、「まだ死んではいない」という絶妙なニュアンスとして普通に使われているが、これは三原が咄嗟に紡ぎ出したオリジナルだった。この言葉で諦めムードの漂っていたチームを鼓舞。第4戦からエース・稲尾和久の4連投という秘策で逆転日本一に輝き、三原マジックは一躍、脚光を浴びることとなった。彼が残した「三原ノート」はその後、栗山英樹の手に渡り、第5回WBCでの世界一へとつながっていくのである。
言葉力でチームを動かした監督と言えば野村克也と長嶋茂雄の2人が思い浮かぶ。
「リーダーはその言葉に選手たちがどれだけ胸打たれるか、感動されるかで値打ちが決まる」と語る野村は、理をもって選手を動かす典型的な指導者だった。
「開幕戦は捨てゲームでも135分の1でもない。135分の135や」
ヤクルト監督時代の'97年、開幕の巨人戦を前に選手に語りかけた言葉だった。前年4位に転落。打倒巨人がペナント奪回の絶対条件と考えた野村が、開幕の巨人戦に勝つことで、選手の巨人コンプレックス払拭を狙ったセリフである。狙い通りにこの135分の135の試合は、小早川毅彦の3打席連続本塁打で激勝。チームは一気に優勝ロードを歩み出すことになる。
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