
18年ぶりのリーグ優勝に導いた2003年。頂点に立った日、赤星との抱擁に闘将の心根がみえた。「劇薬」とも称された男がみせた鬼と仏の顔。暗黒時代と決別させた2年間の真実を探った。
2002年、タイガースの選手たちは、覚悟を決めなければならなかった。
星野さんがやってくる。きっと、怒られるんやろな――。
1980年代の終わりから阪神は低迷期に入っていた。'01年まで4年連続で最下位、しかも久々の外様監督として野村克也を招いても状況は変わらなかった。そこに中日で指揮を執っていた星野仙一を招聘した。劇薬の投入である。
愛知県刈谷市出身、'01年に入団した赤星憲広は「闘将星野」のファンとして育った。
「中日の人というイメージが強く、厳しいことで有名でしたが、阪神で震えあがるほど怖かったかというと、そんなことはなかったです。むしろ、人心掌握術に優れていて、選手個人に対してアプローチを変えられる繊細さを持ってらっしゃった方です」
赤星は「プロにたどり着くまでに遠回りした」という感覚を持っており、逆境に追い込まれれば追い込まれるほど、燃えるタイプだった。

「星野さんはすぐに僕の性格を見抜いたと思います。キャンプの時、新聞に開幕予想オーダーが出るじゃないですか。僕の名前は入っていませんでした。代走要員。監督がそういう雰囲気を出すんです。当然、危機感が芽生えます」
2月の春季キャンプ中、翌日が休養日となる夜、赤星は宿舎の前で、たったひとりで素振りを続けていた。そこに関係者と会食を終え、ご機嫌の星野が帰ってきた。
「いきなり『お前、何やっとんじゃ! ちょっと来い!』という監督の怒鳴り声が聞こえてきました。恐る恐る近寄っていくと『わざと、俺の前でアピールか?』と言っているのに、笑顔だったんです。それが初めて監督に褒められた瞬間でした」
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