ナポリを33年ぶりのセリエA優勝に導いたスパレッティ監督は64歳。スクデットを手にした最年長監督となった。現日本代表コーチの名波浩氏がベネツィアでプレーしていた頃の監督が時を経て、ついにタイトルを手にしたというのは感慨深いものがある。
監督としての評価は以前から高かった。'00年代中期に指揮したローマではトッティを最前線に置き魅力的なサッカーを展開、欧州中で話題となった。スパレッティが尊敬するグアルディオラがメッシを同ポジションに配する随分と前のことだ。しかし、セリエAには手が届かなかった。同い年のアンチェロッティが欧州各地でタイトルを手にする中「いい監督だが勝つための監督ではない」とも言われ、ロシアではゼニトを率い優勝したが「セリエAの重みはまるで別」(ガゼッタ紙)とイタリアの見方はかくも厳しかった。ついに手にした成功を喜ぶのはナポリ人だけではないはずだ。
この優勝でスパレッティのナポリの時代が到来か――との声もあるが、簡単ではない。現在のイタリアは4年間で異なる4チームが優勝するという群雄割拠の時代。欧州でもこれほど拮抗しているリーグはない。
まずは今季の優勝で移籍市場での人気銘柄となった選手たちをどれだけキープできるか。優勝の立役者のひとり、FWクバラツヘリアの開幕時の市場価値は1000万ユーロだったが、現在は1億ユーロと10倍になっている(ガゼッタ紙算出)。今季得点ランキングトップのオシムヘンは1億5000万ユーロだ。今季の活躍で欧州最高のCBのひとりとまで評価されるようになった韓国人キム・ミンジェの違約金は5000万ユーロほどといわれており、プレミアリーグのクラブにとっては簡単に出せる額だ。デ・ラウレンティス会長は「来季はチャンピオンズリーグを狙う」と威勢はいいが、全員が残留することはないだろう。
ただ、今季もクリバリーやインシーニェ、メルテンス、ファビアン・ルイスら中軸を放出した中での優勝だった。ロボツカやアンギサら、地味な好選手を見つけた敏腕SDのジュントーリが連れてくるであろう新戦力が再び機能すれば、スパレッティのナポリはイタリアとCLの舞台でさらなる躍進を見せるだろう。