#1051
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[最近の地方競馬とダービーと]ダービーシリーズがあるじゃないか

2022/05/21
3連単300万円超となった大波乱の第67回羽田盃。1着(15)ミヤギザオウは9番人気、2着(8)ライアンは13番人気だった
一時の絶滅危機から、いまや我が世の春を謳歌する地方競馬。今年も東京優駿と同日から8つある地方ダービーの祭典が始まる。近年の活況を象徴するキーワード、それは“トイレ”である。

 ご飯を食べながら読んでいるそこのあなた、ごめんなさい。「最近の地方競馬とダービーと」というざっくりとしたテーマでお届けする本稿は、トイレの話から始まります。10年、20年前にはとても予想できなかった近年の地方競馬の活況。それを象徴するのがトイレだと思うのだ。では早速、地方競馬界に巨大な足跡を残した船橋のレジェンド、川島正行調教師(故人)に聞いたこんなエピソードをご紹介しよう。

 ファンサービスに心を砕き、自らも様々なイベントを企画した川島調教師はあるとき、「まずは競馬場のトイレを綺麗にしなきゃダメだ」と考えた。スタンドとともに老朽化が進行、嬉しくない“香り”も漂ってきそうな今のトイレのままでは、お客さんが競馬場に足を運んでくれるはずもない。

 しかし施設の担当者に掛け合っても、話は一向に進まなかった。業を煮やした彼は私費を投じて一部のトイレを改修。掃き溜めに鶴を地でいくピカピカのトイレをつくったという。するとどうなったか。

「女性のお客さんはみんな、遠回りしてでも(改修された)こっちのトイレに入りに来たよ」

 癌に倒れ、2014年に亡くなられた川島調教師だが、あのときのドヤ顔は今でも忘れられない。

 もっとも、主催者の側に立てば“当時はそれどころではなかった”が本音だろう。バブル崩壊の直撃を受け、地方競馬の売り上げは1991年の約9862億円をピークに年々減少。'01年3月に中津競馬が廃止されると、同調する主催者が続出し、わずか4年のうちに数々の競馬場が姿を消した。この「廃止ドミノ」がひと段落した後も、'11年には荒尾競馬、'13年には福山競馬が歴史に幕を閉じている。

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photograph by Yuki Suenaga

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