#1046
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[フィギュア最年少メダリスト]鍵山優真「底なしの楽しむ力」

オリンピアンの父の教えを受け、シニア2シーズン目の18歳で、日本フィギュア史上最年少の五輪メダリストへと駆け上がった。夢の舞台で見せた自信と笑顔、その裏側にあった意識の変化を探る。

「初めてのオリンピックなので、1分1秒を楽しんでやりたいと思っていました」

 銀メダリストとして臨んだ記者会見で、鍵山優真は何度も「楽しんだ」という言葉を繰り返した。その言葉の通り、この北京五輪の大会中、鍵山は18歳そのものの無邪気さや笑顔を、折々で見せていた。

 しかし今季前半は、まったく違う心境でスタートした。'21年世界選手権で銀メダリストとなり、その肩書きを背負い、苦しんでいたのだ。

「今思うと、去年の結果を意識したり、期待されてる中でもっと新しい自分を出していかなきゃって考えたり、勝手に何かを背負ってプレッシャーを感じていました」

 特に鍵山が重圧を感じたのはショートだった。4回転サルコウとトウループの2種類を入れるジャンプ構成の難度は、昨季と変わらない。だからこそ「成長していない」という負い目を感じ、かえってミスが出るようになっていた。

 昨年11月のGPイタリア大会では、4回転2本ともミスをして7位発進。そこで追い込まれた鍵山を救ったのが、父である正和コーチの言葉だった。

「立場や成績は関係ない。ただひたすら練習してきたことを頑張るだけだよ」

 吹っ切れた鍵山は、フリーをパーフェクトに演じて逆転優勝を果たした。

「ただひたすら思い切りやるということだけ考えてやりました。何か重いモノを降ろすことができたら、フリーで良いかたちの演技を出せたのは、良い経験でした」

 背負うか、背負わないか。ちょっとした気の持ち方で、こんなにも自分の演技が変わるということを痛感した試合だった。

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photograph by Ryosuke Menju/JMPA
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