#988
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<不動のナンバー10へ> 田村優「したたかな司令塔」

2019/10/19
アイルランド戦では複数のロングゴールも決め、復調を印象づけた。
開幕戦でナイーブな面を顕にしたSOは、続く2戦の活躍で、その不安を払拭してみせた。ジャパンを背負う男のプレーと言葉に、4年の歳月をかけて遂げた進化が見えた。(Number988号掲載)

 4年前、大仕事を終えて南アフリカへ向かうエディー・ジョーンズ氏と彼のオフィスで会い、いろいろな話をした。

 エディーさんはスーパーラグビーの世界へ転身することになっていたが(その後、電撃的にイングランドのヘッドコーチに就任する)、「2019」の日本代表についても話が及んだ。

「今回のチームから、4年後に残っているのは誰でしょう?」と私が質問すると、エディーさんは次のような名前を並べた。

「稲垣(啓太)は第1列の中心にならなければいけません。堀江(翔太)もまだ大丈夫でしょう。リーチ(マイケル)、ナキ(アマナキ・レレイ・マフィ)は世界を代表する選手になっているはずです」

 そして話はバックスにも及んだ。

「フミ(田中史朗)は年齢を重ねますから、後半に投入する役割に代わるかも。そして中心になるのは立川(理道)、福岡(堅樹)、松島(幸太朗)でしょう」

 そこに田村優の名前はなかった。田村は? と私が尋ねると、エディーさんは少し間を置いた。

「田村には好不調の波があります。W杯は一発勝負です。もしも、不調の日が南アフリカ戦に来ていたらどうします? 田村は4年間かけて、信頼できる選手であることを証明する必要があるでしょう」

JJは田村に信頼を寄せた。

 2016年から日本代表はヘッドコーチにジェイミー・ジョセフ、アタックコーチにトニー・ブラウンを迎えたが、そのなかで競争を勝ち抜き、信頼を得たのが田村だった。

 その要因は、ジェイミー・ジャパンが標榜してきたキックを中心とした「アンストラクチャー」戦術を司令塔の田村がもっとも理解し、忠実に実行できたからだ。しかしそれでも、昨年までは好不調の波があり、田村のキックのミスがそのまま失点につながることもあった。

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photograph by Atsushi Kondo

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