プロ野球選手になることを夢見て、白球を追う少年は少なくない。私もその一人だった。だが、いざプロになってからも、一方では自身の選手生命を意識せざるを得なかったことを思い出す。
思想家・孔子の『易経』には、私が大切にする人生の法則が書かれている。
優れた人物は、平穏で安泰でもそれが失われる時のことを忘れない。どんな存在でも、いつかは滅びることを忘れない。つまり、危機管理意識の重要さを説く。
プロ野球界は決して平安な世界とは言えない。ほとんどの選手が、10年にも満たない勤続年数で戦力外通告を受ける。活躍すれば英雄になれる華やかさを持つ一方、単年ごとに“クビ”はいつ切られるかわからない。むしろ過酷な世界である。そして過酷なのは現役の時だけではない。それは、引退後である。
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