将来を嘱望される陸上選手が、交通事故に遭う。完治の望めない複雑骨折、壊死の危険性、そして左ひざ下切断という判断へ。彼女がそのとき損なったのは、肉体の一部だけでない。自分が自分であるアイデンティティのすべてを喪失したのだ。それでも人は生き続けられるか。本書が描くのはそうしたテーマである。
実業団に所属する20歳の市ノ瀬沙良は、200mの選手だ。日々記録を更新し、日本選手権での入賞を目指していた。その矢先、事故が起きる。隣家に住む幼なじみの相楽泰輔が運転する車が街路灯をなぎ倒すのに居合わせ、下半身が挟まれてしまったのだ。左足の切断面を見つめる沙良の脳裏に浮かぶのは、深い絶望と被害者意識、そして怨嗟だった。
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photograph by Sports Graphic Number