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<箱根の元エースが語るアプローチ> 佐藤悠基と考える、箱根駅伝とマラソンを隔てるもの

2013/03/28
箱根駅伝で活躍した選手は、その後マラソンで活躍できない――。
そんな流れを打破しそうな動きが、若きランナーの間で生まれている。
その中心を担うであろう26歳が語る、新しいマラソンへのアプローチとは。

好評発売中の雑誌Number Do『フルマラソン 100人のマイ・ルール~42.195kmを賢く走ろう~』より、特別公開します!

「いい初マラソンだったと思います」

 2時間16分31秒。佐藤悠基の東京マラソンの記録だ。東海大時代には箱根駅伝で3度の区間新記録を樹立した学生長距離界のスター。ロンドン五輪にも出場し、日本マラソン界の将来を担う存在とまで言われる男の記録としては物足りないが、本人は自分なりの手応えを得ているようだ。

「マラソンランナーとしてゼロの状態で臨んだんです。今回は怪我の影響で十分な練習ができていなかったんですけど、それでも挑戦したかった。まずは42.195kmを経験してみないと、自分の中でマラソンっていうもののイメージが湧いてこなかったので」

「35kmを過ぎてからが、もう自分ではどうしようもなくて」

 佐藤は30kmまでは先頭集団の中でリズムよく走っていたが、アフリカ勢のスパートに対応することができず、さらに35kmからはガクっとスピードが落ちてしまう。最後はジョギングのような走りでゴールした。

YUKI SATO
1986年11月26日、静岡県生まれ。佐久長聖高で頭角を現すと、東海大では箱根駅伝で3年連続区間新を樹立した。ベストタイムは5000mが13分23秒57、1万mが27分38秒25(日本歴代3位)。日清食品グループ所属。178cm、60kg。

「35kmを過ぎてからが、もう自分ではどうしようもなくて。トラックで体が動かないっていう感覚と、マラソンのそれは違ったんです。トラックだと、まず頭で『きついな』って感じてから体が動かなくなっていくんですけど、マラソンは頭はまだまだ余裕はあって『いける』って考えてるのに、脚がもう動いてこない。そのうち脳にも糖がいかなくなったのか、考える力もなくなっていきました」

 そもそも今回の東京マラソンには「余白」をもったまま臨んだのだという。

「一般的にマラソントレーニングと言われるものを100%こなして駄目だったら、次にどうしたらいいのかが分からなくなりそうでした。袋小路にはまるというか。例えば、いきなり月間1200km走ってスタートラインに立ち、後半失速してしまったら『距離を踏んでも意味がない』となってしまう。今回は6、7割の練習しかできてなかったし、30km以降の失速も当たり前だと思っていたんです」

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photograph by Tamon Matsuzono

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