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<アジア杯、三者三様のFW像> 得点力不足は解消したか。~岡崎慎司、李忠成、前田遼一~
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byTakuya Sugiyama
posted2011/02/16 06:00
重責を果たした彼らがつかんだ手応えとは。
大会前の彼らに寄せられていた期待は、FWというポジションからするとささやかなものでしかなかった。ドーハへ向かうチームの主役は香川真司と本田圭佑であり、得点源としての期待はそのまま背番号10と18に託されていた。前田遼一、岡崎慎司、李忠成の3人にFWとしての義務感や職務感を求める声は、かなり控え目だったと言っていい。
グループリーグ初戦でヨルダンと引き分けると、1トップを務めた前田に冷やかな視線が向けられる。ザックことアルベルト・ザッケローニ監督に前半だけで交代を告げられ、センターバックの吉田麻也がチームを敗戦から救う試合展開では、ストライカーが批判を免れることはできない。
「フィジカルコンディションが上がっていなかったというより、僕自身が自分の役割をはっきりと理解できていなかった」
自分がいなくなった後半の戦いぶりを、前田はベンチから見つめていた。前半の自分のプレーと、照らし合わせてみる。気づかされることがあった。
「もっと前線でプレーしたほうが良かったかな、と感じて。僕が引いていたから、相手の最終ラインは下がらなかったと思うんです。チュンソン(李)のプレーを見ながら、監督が1トップに何を求めているのか、どういうプレーをして欲しいのかを考えていました」
国際Aマッチデビューのチャンスを生かせなかった李。
前田に代わって投入された李は、「DFラインの裏へ抜けろ」とザックから指示されていた。持ち味のひとつとするプレーだ。指揮官のイメージを、ピッチ上に描いていく。オフサイドぎりぎりで執拗に駆け引きをする動き出しは、ヨルダンの最終ラインをゴール前へ押し戻した。
しかし、終了のホイッスルを聞いた瞬間は、両膝に手をついて視線を落とした。国際Aマッチデビューを飾った李の脳裏には、直前の決定機の残像が貼り付いていた。
「どんな試合でも、一度は必ずチャンスがくる。それをモノにしないといけない。デビュー戦で45分出られたのは大きいですけど、プレーは全然ダメです。サイドからいいボールが入ってくるので、そこでどう決めるか」
ヨルダン戦で李に続く2枚目のカードで投入された岡崎は、試合の流れにはっきりとした影響をもたらした。4-2-3-1の「3の左」から馬力のある突破をはかり、63分に長谷部誠へ決定機を提供する。同点に追いついた直後の93分には、CKから決定的なヘッドを放った。アグレッシブで泥臭い仕掛けは、球際の粘りに欠けるチームを目覚めさせた。
「いや、あれだけフリーでパスをもらえたら、どんどん仕掛けられますよ。次の試合でも相手の守備をどっちかに寄せてサイドチェンジをしたら、今日みたいにいけます。後半のような展開に、最初から持ち込みたいですね」