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<アジア杯、三者三様のFW像> 得点力不足は解消したか。~岡崎慎司、李忠成、前田遼一~ 

text by

戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2011/02/16 06:00

<アジア杯、三者三様のFW像> 得点力不足は解消したか。~岡崎慎司、李忠成、前田遼一~<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

シリア戦、この日も途中出場した岡崎がチームを救う。

 ヨルダン戦を反省材料に本格的な戦闘モードへシフトしたチームは、シリアとの第2戦で序盤から主導権を掌握する。前半のボール支配率は62%を記録し、シュート数でも圧倒した。35分の長谷部の先制点は、連動性とゴールへの意欲が結びついたものだった。

 ところが、72分に川島永嗣が一発退場となり、PKを与えてしまう。同点にされただけでなく、数的不利にも立たされたチームを救ったのは、この日も後半途中から登場した岡崎である。果敢な飛び出しとボールへの執着心が、ペナルティエリア内で反則を誘った。

 投入直後は左サイドで相手守備陣に圧力をかけ、10人になってからは1トップで存在感を示した。先発出場への期待感が沸き立つが、「それは監督次第ですから」と冷静に切り出す。落ち着いた現状分析が明かされた。

「このチームのフォーメーションで、自分の特徴を出しきることに集中しています。いまの僕の立場は、結果を出さない限り先発では出られませんから」

 でも、と言葉が繋がれる。張りのある声に、明確な野心がにじんだ。

「どこでも与えられた役割はできるし、どこでも自分の特徴を出せるのは、僕の強みかなと思う。そこは自信があります」

松井大輔のチーム離脱で巡ってきた先発出場のチャンス。

 期せずして、先発出場のチャンスが巡ってくる。「3の右」で起用されてきた松井大輔が、右足の太股を痛めてチームを離れたのだ。

 サウジアラビアとのグループリーグ最終戦で、岡崎は中盤の右サイドを担当する。3試合目にして3つ目となるポジションから、精神面の充実を表現していく。8分の先制点でチームの緊張感を解きほぐし、13分の追加点で勢いをもたらす。4-0で迎えた80分には、代表で3度目のハットトリックを達成した。

 彼自身が評価したのは2点目である。ザックの監督就任とともにサイドが主戦場となった岡崎は、ゴール前へ飛び出すタイミングに磨きをかけている。「2トップでやっている感覚のままだと、どうしてもゴール前へ早く入り過ぎてしまうことがある」ためで、ザックからも「ちょっと後ろに引きながら、DFラインの裏を狙っていけ」と指示されてきた。

「ゴール前に早く入り過ぎると、相手に先に身体を入れられたり、オフサイドになってしまうこともあるので、サイドから瞬間的に入っていくのが効果的。僕の位置から裏を狙っていけば、相手の最終ラインは下がるだろうし、自分の特徴を生かすことにもつながる」

 この試合では、前田も2ゴールをマークした。国際Aマッチでネットを揺らすのは、'08年2月の北朝鮮戦以来となる。

「ヨルダン戦を振り返ると、しっかり深さを取る動きをすれば、攻撃がもっとうまく流れたと思う。監督からも、深さを取って前線で起点になるように、と言われているので。自分が何をするべきかが、試合だけじゃなく練習を続けていくなかではっきりとしてきた」

【次ページ】 “遅れてきたタレント”前田が潜在能力を発揮するまで。

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