セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
因縁のユーベ戦で途中出場も……。
無言でピッチを去った長友の苦悩。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2011/02/14 12:45
ユベントスの“ビアンコネーロ(白と黒)”と初めて戦った“ネラッズーロ”の長友。スタディオ・オリンピコでは、ユベントス・サポーターの爆弾を使った応援という過激な洗礼を受けることとなった
レオナルド監督が長友に期待したプレーとは何か?
インテルは、レオナルドが采配を揮うようになってから、リーグ戦で1試合平均3点を奪っている。
後半28分、FWパンデフに続いて長友が左SBとして投入された。
「左サイドから縦へのアタックを狙った。長友には彼のスピードを生かして突破し、速いクロスを上げてほしいと伝えた」
点を取りに行く、というレオナルド監督からの明らかなメッセージだった。布陣は4-2-3-1に変化した。
長友が中盤底のコンダクター、カンビアッソと交代したことで、攻撃の起点はすべてスナイデルに集まった。
31分、スナイデルが左サイド前方に張るエトーへ優雅なパスを通す間に、長友はもうエトーの背後を駆け抜けている。だが、その後が続かない。前方の4人、特にスナイデルとエトーとどう絡んでいくのか、まだ十分な連係も、互いを理解しあうための時間もとれていない。
異様な盛り上がりを見せた“イタリア・ダービー”の洗礼。
終盤、3トップとなったユーベが、なおもカウンターから追加点を狙う構えを見せたため、長友は守備でも気を抜くわけにはいかなかった。
スタディオ・オリンピコのピッチには発煙筒が次々と投げ込まれ、観衆は卑猥な言葉を吐きながら目前に迫った勝利に酔っていた。
“試合続行不可能と見なされ、中断される恐れがあります。危険物投下は、おやめください!”と、悲痛なアナウンスが繰り返される。
およそJリーグではありえない光景の中、長友は必死にピッチの中の居場所を探していた。
何もできないまま試合終了の笛を聴いたとき、長友は悔しさからかシャツで顔を覆った。
試合後、レオナルド監督のみが報道陣に口を開き、「ユーべは彼へのスペースを与えなかったし、われわれにはすでに3人のFWが前にいたから、長友が割って入るスペースを見つけるのは難しかったろう」と擁護した。