侍ジャパンPRESSBACK NUMBER
「WBC選手登録にあった“別リスト”」「球種伝達は“黒”じゃない」侍ジャパンが翻弄されたルール「ピッチクロック導入だけでは意味がない」日本野球の課題
text by

佐藤春佳Haruka Sato
photograph byYuki Suenaga
posted2026/06/09 11:42
侍ジャパンのヘッドコーチを務めた金子誠氏があえていま「あの敗退」を振り返った。
――大谷の二刀流起用に関しても、実際には厳密なルールがあったと聞きます。ベネズエラ戦前の練習でライブBPに登板した際には公式会見で「WBCで投手として登板する可能性」の質問が出たほどでしたが……。
金子 大会中もそんな話題が出ていましたが、そもそも最初に打者として登録している時点で絶対に投手としての登板はできませんでした。万が一の可能性に賭けてツーウェイで登録しておくということも難しかったと思います。
「投手を孤独にしてしまう」厳密なルール
ほぼMLB方式で行われた試合は、日本野球とは全く別のスピード感で進んだ。ピッチコムやピッチクロックそのもの以外でも、「時間を使う」という行為に対し、とにかく厳しいジャッジがなされたという。
ADVERTISEMENT
金子 イニング間の時間も厳密に決まっているので試合がどんどん進んでいく。投手だけでなく打者も時間に追われます。例えば自打球が当たっても日本人特有の感覚で我慢して打席に入ると時計が進んでしまうので、むしろ痛がって打席を外さなければいけない。あとは投手を孤独にしてしまうなというのは実感しましたね。
――というと?
金子 マウンドに行ける回数は1試合で4回と決められている。コーチがマウンドに行っても1回、捕手や野手が声がけに行っても1回と数えられてしまう。内野手が後ろから声を張って何か伝えようにもあの熱狂の中では聞こえません。誰がその4回を優先的に使うのか、もう少し事前の準備をしてあげられたのではないか、と反省しています。
――野球の「間」やリズム感というものが、日本野球とは全く違う。
金子 そうです。ピッチコムを使うことでバッテリー間の“所作”が全く違うものになる。投手が捕手とアイコンタクトをとって指のサインに時折首を振り、バッターとの間合いを計りながら投球動作に入る……という行程は全くなくなります。NPBの投手にとっては長年のルーティンが崩れ、逆に間合いが取りにくかったと思います。微妙なところも慣れるためにもう少し場数は必要だったというのは感じます。


