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「ひたすら自分を責めました」生まれてきた子は右手首の先が…障がいに直面した美馬アンナを支えた夫・美馬学(ロッテ)の言葉「あの時、信じて良かった」
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佐藤春佳Haruka Sato
photograph byMiki Fukano
posted2026/03/27 11:06
ポジティブで明るい笑顔が印象的な美馬アンナさん
同じ頃、30代半ばを超えた美馬は野球選手としてキャリアの終盤に向き合っていた。2024年には右膝の靭帯を痛め戦列離脱。年齢を重ね、怪我と闘い続けてきた身体には黄信号が点っていた。アンナさんが振り返る。
「肘とか膝とか、身体はボロボロだったと思います。なかなか結果が出ないなかで、2024年のシーズン終盤も、このままいけば多分戦力外になるだろうと覚悟していたみたいです。結局契約を1年延長することができたのですが、2025年を迎える前に主人からは『自分としては最後まで泥臭く足掻きたい。でも次のシーズンが最後になると思うからアンちゃんもそのつもりで過ごして欲しい』と言われていました。
私も少しずつ覚悟を決めていましたが、それでも奇跡が起こるんじゃないか、彼なら奇跡を起こしそうだなって思って見守っていました」
引退登板でまさかの結末
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昨シーズンのキャンプはリハビリスタート。5月には実戦復帰したが再びコンディションが悪化し、一軍登板は叶わぬまま9月に現役引退を決断した。
「私から見ても限界ギリギリだったと思います。痛み止めを飲んでも何をしても無理をする人なので、最後は怪我がストップをかけてくれたのだろうと思います。最後は夫から『どう思う?』と聞かれて、『もう十分やったと思う。ここから先は、若い選手を支える番なんじゃない』と話しました。彼から『もう痛みに耐えなくていいんだ』というような言葉を聞いた時、私もホッとしたような思いがありました」
引退試合は9月30日、古巣の楽天戦だった。両チームのファンの歓声に押されて先発マウンドに上がり、1番打者の浅村栄斗と1打席限定で対戦した。1球目は140kmのストレート。2球目もストレートで空振りを奪い、2ストライクと追い込んだ3球目だった。白球を投げ込んだ瞬間、ボロボロだった右肘は限界を超えた。5球目は背中へと抜けるボール球。膝に手をつき、顔を歪めた美馬が投じた最後の6球目は頭の後ろを抜けていったが、浅村はそれをあえて空振りして三振に倒れ、勝負を終えた。

