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「ひたすら自分を責めました」生まれてきた子は右手首の先が…障がいに直面した美馬アンナを支えた夫・美馬学(ロッテ)の言葉「あの時、信じて良かった」
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佐藤春佳Haruka Sato
photograph byMiki Fukano
posted2026/03/27 11:06
ポジティブで明るい笑顔が印象的な美馬アンナさん
「ああ、この人だったら大丈夫だな、この子に沢山愛情を注いでくれるんだろうな、って。張り詰めていた気持ちが解けていくようでした。同時にお腹の中にいた時に分かっていたら、なんていう言葉を口にした自分がすごく情けなくなりました。彼はこんなに強い気持ちでいてくれているのに、母親である自分はただ毎日泣いているだけじゃないか、って。あの時の彼の言葉は、本当に全てでした。あの時の私には」
この時、美馬自身はレギュラーシーズン中に取得していた国内フリーエージェント権(FA権)を行使し、交渉の最中だった。アンナさんの前では自身の迷いや去就の悩みは一切口にせず、時には病室から交渉の場へ通うこともあった。
夫は陰で涙を「私の前では常に明るくて…」
「彼の心の大きさというものを、あらためて尊敬しました。後から聞いて知ったんですけど、息子が生まれた直後、私の母に電話をかけた時には彼、電話口で泣きながら『右手が……本当にすみません、すみません』ってずっと謝っていたそうです。陰ではそんなふうに彼も動揺して、泣いていたのに、私の前では常に明るい顔でポジティブな言葉をかけてくれた。彼の存在に本当に支えられました」
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障がいを抱えた愛息を育てるなかでは、幾度も大きな壁にぶつかった。できないこと、他の子どもより時間がかかることは当然多く、子ども同士の関係のなかで傷つく息子の姿を見ることもあった。しかし、その紆余曲折の中で夫婦の絆はさらに深まっていったとアンナさんは振り返る。
「何か出来ないことが出てきた時、私は『そんなことでヘコむな!』みたいに勢いで言ってしまうこともあるんですが、主人は『じゃあどうしたらできるか考えてみよう、一緒にやってみようよ』と常に丁寧に息子に寄り添ってあげられるんですよ。あの時の言葉をずっと有言実行し続けてくれているし、息子はずっとパパが大好きなんです。あの時、信じて良かったなって。この人は本当に父親になるべき人だったんだなと思えてすごく嬉しいし、ただひたすら感謝です」
戦力外も覚悟…引退までの葛藤
美馬はロッテにFA移籍し、新天地での1年目の2020年に二桁勝利を挙げて4年ぶりのAクラス入りに貢献。2022年には20試合に先発して二桁勝利と、先発ローテーションの柱として安定した成績を残した。プライベートでは2023年8月に第二子の長女が誕生。“お兄ちゃん”となった長男の成長や愛娘の無邪気な姿を見守る中で、家族愛はさらに濃いものになった。


