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「ひたすら自分を責めました」生まれてきた子は右手首の先が…障がいに直面した美馬アンナを支えた夫・美馬学(ロッテ)の言葉「あの時、信じて良かった」
text by

佐藤春佳Haruka Sato
photograph byMiki Fukano
posted2026/03/27 11:06
ポジティブで明るい笑顔が印象的な美馬アンナさん
「あ、何か起きたのだとすぐに気づきました。そして体の方にボールがいっても打席を離れずバットを振ってくれた浅村選手の姿を見て、申し訳ない気持ちと、本当にありがたいという気持ちで心が揺さぶられました。ネット裏でベンチを外れた選手や裏方さんもみんな泣いていて、こんなに凄いことはないな、って……。彼らしい終わり方だったと思うし、ボロボロになっても投げている姿は本当にカッコ良かったです」
「手がゾンビみたいに…」限界を超えて戦った夫
マウンドを降り、アンナさんの元に戻ってきた美馬の右腕はみるみるうちに色が変わっていった。後日受けた診断名は「右肘屈筋共同腱断裂」。まさに限界を超えても投げ続け、ユニフォームを脱いだ。
「手がゾンビみたいになっていて、もう笑っちゃう程でした。本人は『こんなはずじゃなかったんだけど』と言っていたけれど、本当に彼らしいなって。投げる姿でメッセージを残したように感じて、感謝の気持ちでいっぱいになりました」
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引退試合後に右肘の手術を受けた美馬は、リハビリを続けながら二軍投手コーチとして指導者の道を歩み出した。出会いから15年。結婚、出産を経て家族としての絆を深め、投手として完全燃焼の終幕までを見届けた。アンナさんにとっても、ここから先の道はまた、新たな挑戦となる。
「彼は、自分が頑張ることで、自分の周りの人にいいことが沢山起こることこそが幸せだと口にする人。自分を犠牲にしても人のために生きているような人なんです。引退した後、少しは自分のために時間を使って欲しいと思っていましたが、今度はベテラン選手が少しでも長く現役を続けられるためにはどうしたらいいかとか、若い選手を指導する時にどんな言葉を使ったらいいのかとか、一生懸命調べたり本を読んだりしています。
その姿を見て、やっぱり自己犠牲が彼のスタイルなんだな、って。出会ってからずっと変わらないその姿を近くで見ていることが、本当に幸せだと感じています」 〈第1回、第2回も公開中です〉


