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平野歩夢の“骨折出場”に韓国もびっくり「なぜ命を削るような挑戦を?」スポーツより“受験”を優先する韓国に刺さった“アユム”の哲学
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キム・ミョンウKim Myung Wook
photograph byNanae Suzuki/JMPA
posted2026/02/16 11:20
4大会連続のメダル獲得とはならなかったが、負傷を感じさせない滑りを披露した平野歩夢(27歳)
同メディアは、2017年の米国大会で彼が経験した肝臓破裂という凄絶な過去を回想している。
「当時、平野は転倒直後もなお競技続行を希望したが、父の懸命な説得で棄権し、その後は病院へ運ばれた。日本メディアでは『手術後、医師からはあと1cmずれていたら死んでいた』という報道もあった。それこそ生死の境界線で、生きているのが幸いと言えるレベルのケガだった」
この死の淵を乗り越えた経験があるからこそ、「平野は生きていることのありがたみと、一瞬にかける重みを誰よりも知っている」と伝えていた。
平野が最後に残した言葉
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韓国の平野に対する報道の傾向からは、単なるケガからの復帰劇ではなく、平野が持つ“哲学”に焦点を当てていることがわかる。
近年、韓国では子どもにスポーツをさせる親が少なくなってきていると聞く。大衆スポーツが盛んな日本に比べ、韓国では将来を見据えた優先順位として勉強、受験が頭にちらつく親が多いのも事実。冬季競技に関してはそもそも人口も少なく、スノーボードは韓国でマイナースポーツでもある。だからこそ、平野が試合を終えたあとに放った言葉の一つひとつが際立つ。
「まずこうやって生きて戻って来れてよかった」
「自分のこの今の状態で、全力でチャレンジできたことは、結果を抜きにしていい経験だったなと思います」
「夢の先に向き合えたことは貴重な時間だと思いますし、『絶対に金メダル取らなきゃいけない』というよりも、そういう目的と、『できるかできないか』っていうことと戦わせてもらえた経験は、気持ちを持っていないとここまで歩んで来れていないと思うので、それがプラスな時間に今日なったと思います」
平野のこの言葉は、韓国でも報じられていた。『スポーツ朝鮮』はこの言葉を受けて、こう締めくくっている。
「今大会は棄権するのが普通のところ、アユムは五輪が“特別な舞台”であることを知っている。だからこそ諦めないのだ」
平野歩夢の挑戦は勝利至上主義とは違う、最も純粋な“アスリートの真理”として韓国に受け止められている。


