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「返事はいい内容ではなかった」五輪前の大ケガ、心配するショーン・ホワイトに平野歩夢が返した“メッセージの中身”…元王者が語ってきた“アユム・ヒラノ像”
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松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byNanae Suzuki/JMPA
posted2026/02/16 06:05
ハーフパイプ決勝を終え、平野歩夢と会話するレジェンド、ショーン・ホワイト
ミラノ五輪前、心配するホワイトに平野が返した内容
その後もホワイトが新設した大会に平野が参加するなど、交流を続けてきた中で迎えた、ミラノ・コルティナ五輪。
試合を前に、ホワイトは北京五輪スノーボードクロス女子で金メダルを獲得したリンゼイ・ジャコベリス(アメリカ)と対談。その中で、平野が怪我したあとのやりとりを明かしている。
「スイス・ラークスでの大会中に彼は激しい転倒をしました。僕は『大丈夫? 調子は?』とメッセージを送ったけれど、返事は正直、あまりいい内容ではなかった。『今、状況を見ているところ』みたいな感じでした。ああ、そうか……と」
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その後、骨折について知ったというホワイトは、「複雑な気持ちです」と語ったあと、こう続けた。
「彼は、仲間みたいな存在です。彼が成長して大会に出るのを見てきたし、一緒に競い合ってもきました。だから、オリンピックを前に怪我をしているのを聞くことが辛いです。身体的なダメージだけでなく、精神的にもきつかったと思います。それでも競技をしなければいけない」
そして印象深い言葉を口にしている。
「彼の幸運を祈っていますし、もし、こういう局面を乗り越えられる人がいるとしたら、それは彼にほかなりません」
平野が決勝へと進んだ予選は、逆境を乗り越えた瞬間でもあった。だからホワイトは称えたのだ。
そして決勝では、怪我を抱えながら、さらに高みを目指し挑戦する平野を見守った。
互いを「誇りに思う」関係性
今、折々の発言を振り返ったとき、しばしば同じ言葉があることに気づく。
「彼を誇りに思う」
同じ土壌の上にいて、価値観を共有し、切磋琢磨してきた。その中で敬意を抱き、共感と愛情をもって接してきた。自分をさらに高みへと引き上げてくれたことへの感謝もある。だから、自分を、ではなく、他の人であっても、誇りに思う。
平野もまた、憧れから始まり、競ってきたホワイトは敬意を抱く存在だ。そして2人で成し遂げてきたことにも誇りを持っている。
平昌五輪のあとに平野は、「何と言えばいいか……自分よりも、さらにプレッシャーがある中、最終滑走で、あの場で決めてくるメンタルの強さにびっくりしました。初めてパフォーマンスして、あそこで金メダルを獲れるということは、ほんとうに素晴らしい」と称えたあと、こう話している。
「(他の選手と)ちょっとレベルの違う争いになりましたね。自分が『こうしなきゃ勝てない』と思って4年間挑んできたように、ショーンもソチの金メダルを獲れなかったときから努力してきたと思う。その結果が、次元の違う争いになったし、引き上げたと思います」
そんな2人の関係は、憧れから始まった。そのスタートから今日まで、平野歩夢は「平野歩夢」であり続けてきたことも、レジェンド、ショーン・ホワイトの言葉は伝えている。

