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「返事はいい内容ではなかった」五輪前の大ケガ、心配するショーン・ホワイトに平野歩夢が返した“メッセージの中身”…元王者が語ってきた“アユム・ヒラノ像”
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松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byNanae Suzuki/JMPA
posted2026/02/16 06:05
ハーフパイプ決勝を終え、平野歩夢と会話するレジェンド、ショーン・ホワイト
顔を62針縫う大怪我を、ホワイトが乗り越えた理由
ホワイトが自身にとっての新トリックを準備していた理由に平野の存在があった。
2017年のUSオープンで、平野は左膝靱帯損傷、肝臓損傷の大怪我を負ったが、そのとき披露していたのがダブルコーク1440だった。
平昌五輪後の『Number』におけるインタビューで、このように話している。
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「彼の2本目を見て、『勝つには彼に匹敵する技、つまり1440を連続で決めるしかない』と覚悟したよ」
トレーニングの過程にあった2017年10月、ホワイトはキャブダブルコーク1440の練習中、顔を62針縫う大怪我を負っている。それを乗り越えての平昌であったし、新たな次元へと自らを引き上げることができたのは、平野の存在があったからだった。だから試合のあとには「自分をさらに高みへと上げてくれました」と感謝している。
そして同インタビューで平野について語っている言葉も印象的だ。
「この先アユムがもっと大きな存在になるにつれ、彼にはより多くのプレッシャーがかかってくる。常に勝つこと、ベストを出すことが求められるから。それが力になることもあれば、障壁になることもあると思う。でも彼には天から与えられた才能と情熱がある。アユムなら“アユム・ヒラノ”を貫くはず。
あれだけ大きな怪我をしたのに同じ道に戻ってきて、さらにハードなトリックをやり続けているのだから。そんな彼の姿を見るのが誇らしいし、良いインスピレーションを受けてもいる」
“最後の試合”でホワイトが平野にかけた言葉
2022年北京五輪は、ホワイトの最後の試合でもあった。
2021年12月、平野はフロントサイドトリプルコーク1440を世界で初めて成功させ、大会に臨んでいた。
迎えた2月11日、この平野はフロントサイドトリプルコーク1440を完璧に決める。オリンピックという舞台で、初めての成功者となり、ついに金メダルを獲得する。
それはホワイトにとっても感慨深いトリックだった。かつてホワイトがチャレンジし、あきらめたものであったからだ。
試合を終えて、ハグしながら互いを称え合う中、平野はホワイトに言葉をかけられたと言う。
「『まじですごい滑りだった』みたいなことを言われました」
ホワイトは、テレビの取材でも平野を称賛した。
「すごくうれしいです。応援していました。歩夢は、すごかった。才能があって、挑戦し続けてきて、ついに金メダルを獲得しました。歩夢を誇りに思います」

