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ミラノ五輪ウラ話…「縫製はずぶの素人だった」28歳元ジャンプ選手がなぜ敏腕スーツ職人に?「年間200着を担う」メダルラッシュの立役者の正体
text by

雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byKiichi Matsumoto
posted2026/02/13 17:00
スキージャンプ日本代表のスーツづくりに携わる尾形優也。現在30歳になった“元ジャンパー”はどんな経緯で現在の仕事に出会ったのだろうか
いまではすっかりスーツ作りも板についた尾形は、恥ずかしそうに新人時代の“作品”を振り返った。
あれから5年半。中学生から社会人に至るまで、日本のスキージャンパーのほぼすべてのスーツを尾形が手がけていると言っていい。
スーツはフルオーダーメイドで、夏場に尾形が各大会を回って採寸し、それを工場で仕立てたものを、また尾形が現場で縫い直すなど調整を加える。一着の値段は中学生であろうと世界王者であろうと税抜き12万円。
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「それはジュニアでも大人でもまったく同じことをしているからなんです。採寸から納品後のフォローまで、同じことをやっているから同じ値段で売る」
理由は競技のルールにある。
《スーツと身体のゆとりは+2~4cm》
《ウエストの切り替えは腰骨の±5cm以内になければならない》
こういった細かな規定があり、人の体がひとりひとり違う以上、すべてをカスタムせざるを得ない。
「きちんと数えたことはないけど、年間200着くらい手がけてるんじゃないでしょうか」
1着に3日かけていたら、とても賄いきれない計算になる。
現在、スキージャンプのスーツを作っているメーカーは、ミズノを含めて3社しかない。海外では各国の連盟が生地を仕入れ、専門のスタッフが代表のスーツを作る形態の方が一般的。世界的なスポーツメーカーのロゴが入っていてもそれはあくまでスポンサーロゴであり、製造者の印ではないらしい。
海外から「日本のスーツはきれい」と賞賛
それだけにメーカーとしてモノづくりをする尾形は、まず安全性を第一に考えて作業する。その上で、性能や美しさまで追求してスーツ作りに関わる。
「海外ではいつも『日本のスーツはきれいだ、こんなにきれいなスーツは海外にはない』と言われます。糸の色を生地や袖口のテープに合わせた目立たない色にしたり、縫い目を揃えることできれいに見せることは心がけています。その方が選手のフィーリングもいいだろうし、手直ししたように見えない方が検査する審判の印象もよくなるはずですから」
代表のテクニカルスタッフとしても名を連ね、その両手で(尾形によればミシンのペダルも踏むので足も使って)、今回のオリンピックに向けたスーツも作り上げてきた。

