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ミラノ五輪ウラ話…「縫製はずぶの素人だった」28歳元ジャンプ選手がなぜ敏腕スーツ職人に?「年間200着をひとりで担う」メダルラッシュの立役者の正体
posted2026/02/13 17:00
スキージャンプ日本代表のスーツづくりに携わる尾形優也。現在30歳になった“元ジャンパー”はどんな経緯で現在の仕事に出会ったのだろうか
text by

雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph by
Kiichi Matsumoto
新人への命題…「3日間でジャンプスーツを作ること」!?
新入社員に与えられた時間は3日間だった。
「スキージャンプ用のスーツを1着作ること」
ミズノで新しくスーツの担当になることが決まっていた尾形優也は、新人研修を終えると兵庫県にある氷上工場に向かった。ジャンプのスーツには慣れているが、縫製はずぶの素人。家庭科の授業でミシンを触った経験ぐらいしかない。
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まずは採寸のやり方から教わり、それを基にパタンナーがパターンを引いてくれる。今度ははさみを使い、生地を手で裁断する。最初のうちはまっすぐ切るのも一苦労。左右のパーツを対称に揃えるのも思った以上に難しい。裁断した生地にロゴマークをプリントするやり方を覚え、それからようやく縫い始める。
縫う、と一口に言っても先は長い。
ミシンの使い方もまったくわからないため、糸の通し方に始まり、ミシンのすべてのセッティングを教わる。指導してくれるのは工場の縫い子さんだ。まずは紙に描かれた三角の線に沿ってきちんと縫えるように練習また練習。ジャンプのスーツは生地を重ねると1.5cmほどにもなるため、ミシンは家庭用と業務用の中間仕様で、太めの針と強めのモーターでパワーを備えている。
巻き尺、裁ちばさみ、ミシン。慣れない道具を使いながら、見よう見まねで3日間。尾形はどうにか一着のスーツを作り上げることができた。
「たまにその時の写真を見ると、へったくそだなと思います。縫い目はガタガタだし、全体的な見た目も雑。たとえば4つのパーツを合わせる箇所は、つなぎ目が十字になるわけですよ。でも縫い方が下手だから十字が歪んでるんです」

