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オリンピックPRESSBACK NUMBER
「今も練習は欠かせません」競技引退から1年半、空手・清水希容32歳が“稽古を続ける”理由…国内外で演武を行う現在「空手の精神性も伝えたい」
text by

矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byJMPA/Miki Fukano
posted2026/02/07 11:01
東京五輪で銀メダルを獲得した清水希容さんの“その後”を聞いたインタビュー【第2回】
清水 競技をやめて一番思ったのは空手がすべてじゃない、勝ち負けがすべてじゃないということです。私は完璧な勝利主義者で、勝ち負け以外のものは存在しないというくらいの感覚でずっと闘ってきたのですが、一歩引いた時にそのことに気づきました。
もちろん空手は私の人生そのものですし、努力は決して無駄ではありません。でも、自分自身もどの試合で勝ったのか覚えていないくらいですし、なおさら人は覚えていません。イベントに行くと「金メダルすごかったですね」と言われます。もちろん、オリンピックのメダルの色としては金が良かったですが、それよりも形の演武の印象が大事なんだなと思いました。ただし、努力し続けた過程があったからこそ、今、それに気づけているのだと思っています。
「引退後は目標がなくて、何をすれば良いのか…」
――さまざまな分野にチャレンジした時間で新たに見つかったことはありますか。
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清水 私はオリンピックや世界大会という分かりやすい目標があればそこに向かって突っ走るってことができるタイプなのですが、引退後は目標がなくて何をすれば良いのか分かりませんでした。ですから引退後の1年は自由な散策の時間のように過ごしました。
当初はやりたいことの「正解」が分かるまで5年くらいかかるのかなと思っていましたが、昨年4月に私自身の立案で京都の清水寺さんで演武をさせていただいた時に、やりたいことが何であるかに気づきました。
――どのようなことですか?
清水 今、日本ではインバウンドが盛んですが、日本の伝統や歴史が安く売られすぎているという懸念があります。例えば着物一つを取っても、日本の伝統的な技術がきちっとした伝承ではなく、表面を触るような感じで持っていかれたりしていますが、私はそれは本質的に違うんじゃないかなと思います。
空手は日本発祥の武道であって、私は競技者時代から空手の歴史を勉強し、それを形に落とし込んでやってきています。ただ、空手は口伝なので(見た人の記憶から)消えていってしまう部分が多いのです。
そこで、日本の文化や深い精神性をもっと世界に広めるにはどうすれば良いかと考え、1200年の歴史があり、誰もが知っている世界遺産の清水寺でインバウンドの人たちに向けて空手の演武をやりたいと思い、清水寺に企画を相談させていただきました。


