Sports Graphic NumberBACK NUMBER
《勝負師の準備論》大舞台で勝つ意義と喜びを知る、井端弘和監督。100%のコンディションで侍ジャパンを再び世界の頂点へ
posted2026/03/06 10:00
2026 WORLD BASEBALL CLASSIC™を前に、大会に向けた意気込みとコンディショニング論について語った井端弘和監督
text by

石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
SAMURAI JAPAN
「同じ1試合でも、ペナントレースと疲労度が全然違いましたね」
2013年のWBC第3回大会で選手として出場した井端弘和は、13年前の記憶をたどりながら、日の丸を背負う重圧と激闘を振り返る。
当時、37歳のベテランは好調を維持し、2次ラウンドのチャイニーズ・タイペイ戦では1点を追う9回2死二塁、絶体絶命のピンチでセンター前へ同点タイムリーヒットを放ち、敗色濃厚だったチームを救った。指名打者として活躍した同大会では、打率.556の成績を挙げ、大会ベストナインにも選出されている。
驚異的なパフォーマンスを発揮できたのは、心も体も最良の状態に整えられていたからにほかならない。
アスリートのパフォーマンス向上に欠かせないコンディション管理。そのコンディションを整える要素には食事や睡眠、トレーニングなど様々あり、いずれもそのバランスが重要視される。
現役時代から重視していたリカバリー
プロ野球選手は約6カ月におよぶペナントレースを戦い抜くため、疲労回復はもちろん、パフォーマンスを最大化するために戦略的かつ計画的にコンディショニングを行なっている。
侍ジャパンを率いる井端弘和も現役時代は翌日に疲労を残さないようリカバリーを意識し、日頃から食事や休養などに気を配っていた。とくに1日の約3分の1を費やす睡眠に関しては、寝具にこだわるなど睡眠の質を重視した。
「最重要視していたのが睡眠でした。条件が整わないときも、とにかく睡眠時間の確保だけはしていましたね。疲労が蓄積すると体の回復が追いつかず、集中力や筋力、柔軟性が低下したり、疲労が回復する前に運動をすることで怪我につながるケースもあります。怪我をすることはアスリートにとって最も怖いことですので、事前に回避するという面でもリカバリーは大切だと考えていました」
怪我は身体的な痛みだけでなく長期間の戦線離脱、場合によっては選手生命を脅かすケースもある。そのリスクを可能な限り事前に排除していた。
現役引退後、アスリートは運動量の減少による代謝低下や生活のリズムの変化から睡眠に悩まされることもあるが、井端はウェアにこだわるなど、引退後もコンディション維持のため睡眠への意識は高い。
「就寝時に『BAKUNE』を着用しているのですが、生地の肌触りがよく、朝までぐっすり眠ることができています。実は以前、夜中に1度は必ず目を覚ましていたんです。それが朝までぐっすり眠れるようになりました。暑い夏もTシャツだと朝起きたときに寝汗で濡れていることがありましたが、それも一切なくなりましたね。質の良い睡眠が取れていることを実感しています」
選手のコンディショニング意識を高めることは、チームを束ねる監督にとって重要なチームビルディングの要素だ。WBCを控えた侍ジャパンを率いる指揮官として、井端は選手にどんなことを求めているのか。
「今の選手は昔と違ってコンディショニングに対しても敏感に察知し対応し、指摘することがないほど貪欲で意識が高いですね」
2023年10月の監督就任後、WBSCプレミア12や強化試合などを通して選手たちと接してきたが、その水準の高さには感心している。
「早く球場入りして準備をして、試合前後もたっぷりと体のケアに時間をかける選手が多いです。次の日の練習や試合に100%のコンディションで臨めるように疲れを残さない調整法を自ら見つけ、実践している印象です。食事の面でも自身の状態からどんな栄養素が必要なのかを栄養士と相談してリクエストする選手もいるくらいです」
年間を通じて、自らをベストな状態に維持する術を知り、実践できる選手こそがプロであり、そういった選手の集まりこそが日本代表だと井端はいう。
“史上最強”チームで狙う連覇の鍵は…
そのプロフェッショナルな集団を束ね、連覇をかけ3月のWBCに挑む。今回はアメリカも歴代最強メンバーを揃えるなど、覇権奪還に向け本気度を見せている。熾烈な戦いが予想される。
「WBCを経験している選手が半数ほどいるので心配はしていません。選手たちは何をすべきか理解していますし、きっちり仕上げてくれると確信しています。私の仕事はチームを同じ方向へと向かわせること。短期間でチームを一つにまとめられるよう選手を見極めながら導いていきます。まずは初戦がとても重要になるので、チャイニーズ・タイペイ戦に照準をあわせて調整していきます」
大谷翔平を始め、山本由伸、菊池雄星、鈴木誠也ら過去最多8人の日本人メジャーリーガーが参戦する侍ジャパンは、“史上最強”との呼び声も高い。
「大谷選手は日本代表にとって重要な存在ですが、選手一人ひとりが自覚と責任を持ってプレーしてもらいたいですし、主役の座を奪うという気概を見せてくれる選手が一人でも多く出てきてもらいたいです」
現役時代に出場した2013年の第3回大会では前述のように大活躍だった。緊迫した場面での同点タイムリーはもちろん、いかなる場面でも動じない精神力は間違いなく日本代表の武器となっていた。あの経験が指導者としての礎にもなっている。
「それまで国際大会の予選などに選ばれても本大会には出場できなかったんです。この大会では念願が叶い、もちろん試合で活躍したいと思っていましたが、とにかく出場できる喜びを感じていました。メジャーリーグの選手も出場する世界一決定戦はWBCしかない。その大舞台で勝つ意義は大きいですね」
勝敗を左右するコンディショニング
WBCのような国際大会や短期決戦でも重要になるのがコンディショニングだ。勝敗を分ける最大の要因といっても過言ではないだけに、大事な場面で力を発揮できる準備を整えておかなければならない。
「私がWBCに出場したときはアメリカラウンドに入ってからは試合が中5日で行われたんですが、間があきすぎてしまって実は調整が難しかったんです。今回は3日程度になるので、ちょうどいい調整期間になるのかなと思いますね」
長距離フライト、時差調整も選手のコンディションに大きく影響する。遠征にともなって生じるパフォーマンスの低下を最小限に留めるためにも、総合的な管理が必要になるだろう。
「1次ラウンドの最終戦後、すぐに飛行機に搭乗し、14時間の移動をする予定です。機内で眠れなければ完全に時差ぼけになってしまうので、機内では照明や食事の工夫によって体内時計を移動先の時間に順応させるとともに、しっかりと睡眠を取る必要があります。機内ではぜひ『BAKUNE』を着用して、しっかりとコンディションを整えたいと思います」
険しく過酷な連覇への道も「優勝しかないと思っている」という指揮官。選手とともに、万全の態勢で大舞台へ挑む。




