甲子園の風BACK NUMBER
「ヤンキー高校」がガラリ、日本一の男子校に「スポーツ有望生徒も朝7時50分から授業」PL学園が経営難のウラで…興國理事長はこうして学校を変えた
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柳川悠二Yuji Yanagawa
photograph byYuji Yanagawa
posted2026/01/15 11:03
興國高校(大阪)の理事長・草島葉子氏
草島 そうなんですよ。人間としてブレのない喜多の就任によって野球部は見違えるように風通しが良くなった。スーパーバイザーを務める三木仁(元近鉄)と阿吽の呼吸で指導にあたってくれています。ただ、甲子園に惜しいところまでは行くんだけど、なかなか届きませんね(苦笑)。
——生徒を育成するだけでなく、教師を育成することも命題に掲げられていますね。
草島 たとえば、サッカー部の中にコーチを指導するコーチがいるように、一般の科目でも数学の先生を指導する“先生”がいたりします。興國は特殊な学校だと思います。だからサッカー部で起きたような事件があってダメージを受けても、起き上がって前を向けるんです。
大阪の私学無償化に本音
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——昨夏の甲子園に出場した東大阪大柏原が閉校になります。授業料の無償化は、授業料が高い私学にとって有利な施策だと思っていました。しかし実態は、年間63万円までの授業料は国と府が負担するものの、それを超える分に関しては学校が負担しなければならない(年収目安800万円未満の世帯については学校が負担)。それが足枷となり、人材や設備に投資できない状況が生まれてしまう。
草島 大阪府の私学における授業料無償化の影響は計り知れません。たとえば、負担金が大きくなるからと授業料を上げたいと思っても、大阪府の私学課が簡単には許可してくれません。新しい校舎を建てるといった設備投資があるならまだしも、赤字を補填したいとか、教員の給料を上げたいとか、そういう理由では授業料を上げることはできない仕組みになっています。学校の負担は大きく、柏原高校さんのようなケースが今後、増えていくかもしれません。
PL学園、広陵を取材…筆者は見た
筆者はPL学園だけでなく、2020年代に入ってから野球部の監督やコーチ、選手の不祥事が相次いだ大阪偕星学園(旧・此花学院)の問題を追及し、昨夏には広陵の集団暴行事件も追いかけた。問題のある学校に共通するのは、学校を、そして生徒を牽引するリーダーが不在であるということだ。一方、興國には草島氏という強烈なリーダーが存在した。
飲酒が発覚しながら全国高校サッカーへの出場を決断した件についてもこう話した。
「私はサッカー部の(六車拓也)監督に言いました。『ファイティングポーズがとれないのなら国立競技場には行かない方がいい』と。私たちもサッカー部と一緒に戦うつもりでした」
興國は今年、創立100周年を迎える。4月には新校舎の工事に着工し、「eスポーツフロア」が誕生する予定だ。サッカーや陸上、野球に力を入れる同校が、eスポーツに力を注ぐのもまた面白い。
「ややもすれば、高校生がeスポーツに励むことは否定されがちですが、男の子って昆虫採集やメカに夢中になったり、路線の駅名を一生懸命覚えたり、そういうものに没頭していく力がある。そういうスポーツとはまた違う男子の脳みそをもっともっと育ててあげたい」
かつて3Kと呼ばれた興國——。やり手の女性理事長によって生まれ変わり、いまや日本一の男子校となった。

