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ボクシングPRESSBACK NUMBER
井上尚弥に完敗「敗者ピカソ、なぜ攻めてこなかった?」現地カメラマンの視点「“何もできない”と思っていたのかも」試合後に見た“井上尚弥の不満”
text by

曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byHiroaki Finito Yamaguchi
posted2025/12/31 17:36
アラン・ピカソに判定で勝利した井上尚弥の試合後会見。完勝にも表情は冴えなかった
――たしかにエルナンデス選手の被弾は決して少なくありませんでした。それでも中盤以降、ラウンドを追うごとにアグレッシブになっていきました。
山口 潤人選手はKOがとても多いですよね。でも、一発で倒してしまうようなハードパンチャータイプではないと思っていて。どちらかと言えば、じわじわと相手の戦力を奪って追い詰めていくタイプ。今回もその型に入りかけていたと思うんですが、エルナンデス選手が異常にタフだった。とにかく相手の実力が高かった、ということに尽きるのかなと。
――判定は3-0(115-113、115-113、118-110)で中谷潤人の勝利。採点について「118-110は差がつきすぎ」という声もありました。
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山口 撮影しているのでラウンドごとにポイントをつけてはいないのですが、終わった直後の印象としては僅差でした。どちらが勝ったか、明確にはわからなかった。ただ、厳しい試合でギリギリ勝ったことで潤人選手が評価を下げられるとしたら気の毒です。相性的に、かなり難しい相手だったのは間違いないですから。本当にボクシングって相性なんですよ。スーパーバンタム級の初戦で、思い描いた展開にならず、あれだけ目を腫らしても動揺を見せずに勝ちきった。会場でも、日本ではない外国の方の「ナカタニー!」といった声援が起きていました。
「ピカソにもっと気持ちを見せてほしかったけど…」
――そして、メインの井上尚弥vs.アラン・ピカソが始まります。
山口 やっぱりメインイベントのときは、会場の空気が変わりました。みんな“モンスター”を見にきたんだな、と思いましたね。
――序盤を見るかぎりでは、「いつもの井上尚弥」だったように思います。パワー、スピード、手数、的確性など、レベルの違いを感じさせる展開でした。
山口 私もいつもの井上尚弥だと感じました。ただ、ピカソ選手のガードが高くて堅かった。そしてほとんど打ちに出てこない。正直、勝とうという気持ちはあまり感じられませんでした。いくら尚弥選手といえど、世界ランクの上位にいる選手にあれだけ徹底的に守られたら仕留めるのは難しいですよ。



