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ボクシングPRESSBACK NUMBER
井上尚弥に完敗「敗者ピカソ、なぜ攻めてこなかった?」現地カメラマンの視点「“何もできない”と思っていたのかも」試合後に見た“井上尚弥の不満”
text by

曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byHiroaki Finito Yamaguchi
posted2025/12/31 17:36
アラン・ピカソに判定で勝利した井上尚弥の試合後会見。完勝にも表情は冴えなかった
――内容的にはフルマークでもおかしくないくらいの圧勝だったと思いますが、完全に守りに入られて、いつもの井上選手らしいシーンを作ることができませんでしたね。
山口 ピカソ選手にもっと気持ちを見せてほしかったですけどね。会場に音が響くような強いパンチが入ると、「いけいけ!」という雰囲気にはなりましたが、すごく盛り上がるという感じではなかった。
ピカソは「何もできない」と思っていたのかも
――“モンスター”が相手とはいえ、ピカソ選手の姿勢に少し疑問を抱く内容ではありました。
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山口 試合をするなかで「何もできない」と思ってしまったのかもしれません。やろうとしていることにすべて対応されてしまって、もう、何もできることがないと。対戦相手にそう思わせてしまうのもすごいことなんですけど、やっぱりチャレンジャーにはリスクを背負って出てきてほしかった、というのが本音です。
――試合後、井上選手がリング上で発した「よくなかった」という言葉も印象的でした。
山口 勝負をしてこない相手にはっきり勝ったので、十分合格点なんじゃないかと思いましたが……。それでもねじ伏せて倒したかったんでしょうね。バンタム級時代のポール・バトラー戦は、ガチガチに守られても11ラウンドで強引にストップに持っていっていますから。
――終了直後になぜか腕を上げたピカソ選手と、渋い表情だった井上選手。これも両者の「目線の違い」を感じさせました。
山口 いやあ、不完全燃焼だったんでしょうね……。試合後の会見でも、勝利した安堵感はありましたが、やっぱり内容には不満そうでした。このレベルの戦いでは、うかつに攻めたら変なパンチを食らう可能性はもちろんある。それでも倒すことが求められるし、尚弥選手自身が自分にそれを求めている。本当にスターは大変ですよ。



