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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「イノウエの姿は“あのレジェンド”と重なる」英国メディアが見た井上尚弥vsピカソ戦のホンネ…挑戦者優位のジャッジには「何を見ていたのか分からない」
text by

一野洋Hiroshi Ichino
photograph byNaoki Fukuda
posted2025/12/31 12:19
リヤドで年間4度目となる防衛を成功させた井上尚弥。モンスターの試合を「ボクシングの本場」英国の記者はどう見たのだろうか
この試合は、相手に主導権を渡す場面がほとんどなく、終始コントロールされた内容だった。派手さはないが、距離とリズムを掌握し、相手の選択肢を一つずつ消していく。ファレル氏は、ピカソ戦をそうした「支配の質」が際立った一戦として捉えている。
ピカソは無敗で世界ランク入りしている選手で、スーパーバンタム級を主戦場としつつ、直前の試合ではフェザー級の亀田京之介と対戦していた。
サイズ、身長、リーチという物理的アドバンテージは、理屈の上では井上にとって脅威になり得た。しかし試合が進むにつれ、その優位性は完全に無効化されていく。
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井上は距離を支配し、角度を変え、相手が踏み込む前に打ち終える。卓越したフットワークとバランス、そして“当て勘”によって、ピカソは攻撃の起点を奪われた。
「ピカソは脅威を感じるたびにガードを固め、頭部への被弾を避けることに集中せざるを得なかった。極めて守備的な戦いを強いられた」
守備に徹した相手を前に、試合を華やかに見せるのは難しい。
だが、それは井上が相手の「やりたいこと」を完全に封じた結果でもある。判定は3-0(119-109, 120-108, 117-111)。しかし、117-111でピカソに3ラウンドを与えたジャッジについて、ファレル氏は「正直、何を見ていたのか分からない」と首をかしげた。
派手さは減ったが…井上の強さで思い出す「あるレジェンド」
特筆すべきはディフェンスだという。
「ピカソが前に出ようとした場面では、イノウエのディフェンスがここしばらくの中で最も冴えており、おそらくスティーブン・フルトン戦以来の出来だった」
攻撃で圧倒する時代を経て、井上は今、守備と制御で勝つフェーズに入っている。2戦連続判定勝ちで派手さが減ったように見えるのは、その進化の裏返しでもある。
ファレル氏は、この“変化”を説明するために、ある「偉大な王者」の名前を挙げた。
<次回へつづく>

