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「後の世界王者に勝利、一時は世界7位に」“天才二世ボクサー”と呼ばれた内藤律樹34歳は今…「生き残りをかけた戦い」オーストラリアでの挑戦に密着

posted2025/12/26 17:02

 
「後の世界王者に勝利、一時は世界7位に」“天才二世ボクサー”と呼ばれた内藤律樹34歳は今…「生き残りをかけた戦い」オーストラリアでの挑戦に密着<Number Web> photograph by Kokou Sekine

元日本・東洋太平洋王者の内藤律樹。2024年12月、石川町のE&Jカシアス・ボクシングジムにて

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関根虎洸

関根虎洸Kokou Sekine

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Kokou Sekine

かつてボクシング最激戦区の中量級で世界の頂点に近づいた内藤律樹(34歳)。父・カシアス内藤ゆずりの天才的なセンスを持つ二世ボクサーは、日本での挫折を経て、オーストラリアで夢の続きを追いかけていた。トレーナーとして、そしてカメラマンとして少年時代から「リッキー」を知る関根虎洸氏が、オーストラリアでの“運命の一戦”に密着した。(全2回の1回目/後編へ)

後の世界王者に勝利、一時は世界7位に…内藤律樹の今

「1ラウンドからいきます。イメージはハグラー対ハーンズです」

 試合の作戦を訊ねた私にリッキーはそう語った。待ち合わせたブリスベンのホテルのロビーで7カ月ぶりに再会したリッキーは、厳しいトレーニングをやり遂げて手に入れた自信が表情からみて取れた。試合前とは思えないくらい身体はガッチリとしている。父であるカシアス内藤の現役時代にシルエットが似てきたな、そんなことを思った。

 リッキーが作戦の引き合いに出したマービン・ハグラー対トーマス・ハーンズは、40年前の1985年に行われた統一世界ミドル級タイトルマッチのことである。サウスポーのハグラーをリッキー自身に重ね合わせ、長身の対戦相手をハーンズに見立てながら、この試合に向けてトレーニングを積んできたのだという。

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 一昨年からオーストラリアへ移り住み、プロボクサーとして活動を続ける「リッキー」こと内藤律樹にとって、この試合がオーストラリア第4戦となる。現地デビューから2戦2勝(2KO)で迎えた2024年11月には、オーストラリア・スーパーライト級タイトルマッチに挑戦。1ラウンドに古傷をカットしてしまい、出血が止まらなかったこともあって、6ラウンドTKO負けを喫していた。現地の国内タイトル挑戦に失敗したリッキーにとって、次の第4戦は再起戦。世界タイトルを目指す上で、負けることの許されない生き残りをかけた戦いになる。

 内藤律樹の父・カシアス内藤は元日本・東洋太平洋王者で、沢木耕太郎『一瞬の夏』の主人公としても知られている。リッキーは二世ボクサーという話題性だけでなく、高校三冠というタイトルを引っ提げて2011年にプロデビューし、無敗のまま2014年に日本スーパーフェザー級王座を獲得。2015年には後のWBO世界スーパーフェザー級王者・伊藤雅雪に勝利するなど、世界ランキングは一時7位まで上昇し、父が果たせなかった世界王座獲得を期待される存在だった。

【次ページ】 試合1カ月前に本人から“ある電話”

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