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「イノウエの姿は“あのレジェンド”と重なる」英国メディアが見た井上尚弥vsピカソ戦のホンネ…挑戦者優位のジャッジには「何を見ていたのか分からない」
posted2025/12/31 12:19
リヤドで年間4度目となる防衛を成功させた井上尚弥。モンスターの試合を「ボクシングの本場」英国の記者はどう見たのだろうか
text by

一野洋Hiroshi Ichino
photograph by
Naoki Fukuda
サウジアラビアのリヤドで12月27日、スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(大橋)ら日本人トップボクサーが出場する「ナイト・オブ・ザ・サムライ」が開催された。年間4度目となる防衛を成功させた王者の戦いを、ボクシングの本場・英国の記者はどう見たのだろうか。《NumberWebレポート全2回の1回目/つづきを読む》
ボクシング世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥が、WBC同級2位アラン・ピカソに判定勝ちを収め、6度目の4団体統一スーパーバンタム級王座防衛に成功した。
年間4度の防衛成功は、日本男子として具志堅用高氏以来46年ぶり。数字と記録だけを並べれば、非の打ち所がない夜だった。
だが、試合後の空気はどこか静かだった。会場に漂ったのは高揚感よりも、評価の難しさである。その理由を最も端的に示していたのは、他ならぬ井上自身の言葉だった。
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「今夜はよくなかったです。よくなかった」
世界最強クラスのボクサーが、ほぼ完封に近い内容で勝利した直後に残した自己評価としては、あまりに厳しい。
英国メディアが見た井上尚弥vsピカソ
だが、この“違和感”こそが、現在の井上を語る上での出発点だ。スポーティングニュースUK版でシニア・コンテンツ・プロデューサーを務める英国記者のドム・ファレル氏はピカソ戦をこう総括する。
「イノウエにとっての問題は、対戦相手ではない。世間が彼を“イノウエ自身が築いてきた偉大さの基準”で評価してしまうことだ。そして何より本人が今回のパフォーマンスを失望だったと受け止めている点にある」
ピカソ戦を「苦戦」と表現する声も一部にはあった。KO決着ではなかったこと、派手なダウンシーンがなかったことが、その印象を助長したのだろう。だがファレル氏は、そうした見方に異を唱える。

