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井上尚弥vsピカソ試合当日の“異変”「まさかの試合ドタキャン」拳四朗号泣会見も…現地記者が見たウラ側「ラスベガスより調整しやすい」井上尚弥の本音
posted2025/12/29 17:30
12月27日、井上尚弥vsアラン・ピカソ。サウジアラビア現地記者が見たウラ側
text by

渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Naoki Fukuda
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井上尚弥“異例の30億円契約”
2019年にスタートしたリヤドシーズンは観光振興を最大の目的としているサウジアラビア政府肝いりのプロジェクトだ。超大型テーマパークをはじめとする巨大な娯楽施設が次々と建設され、音楽や芸術のトップアーティスト、スポーツの世界的選手を招へいしてイベントを開催している。
石油大国として潤ってきた同国が脱化石燃料という世界的潮流を受け、他のことでも稼ぎ口を作り出そうという意図なのだろう。リヤド市内はいたるところでホテルなどの建設ラッシュが進み、車で街中を通りすぎるだけでも国が変わろうとしている姿がうかがえる。
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リヤドシーズンのスポーツイベントにおいて、ボクシングは先駆的かつ中心的な存在だ。プロジェクトをリードする総合娯楽庁のトゥルキ・アルシェイク長官が大のボクシング好きで、豊富なオイルマネーにものを言わせてヘビー級ビッグマッチを招致したのを皮切りに、わずか5年ほどで世界のトップボクサーのほぼすべてを同国のリングに上げるまでになった。
こうした背景から、同長官が世界トップボクサーの一人であるモンスター、井上に目をつけたのは当然で、まずは昨年、リヤドシーズンは井上と推定3年30億円のアンバサダー契約を結んだ。そして今回、満を持してモンスターをサウジアラビアに迎えるにあたり、来年5月に東京ドームでの対戦が期待される中谷潤人(M.T)のスーパーバンタム級進出第1戦を組み込んだ。イベントを日本人ドリームマッチの「前哨戦」と位置づけ、ボクシングファンの心をつかもうとした。
さらに、前フライ級2団体統一王者の寺地拳四朗(B・M・B)、リヤドシーズンが傘下に収めた老舗ボクシング雑誌「ザ・リング」とアンバサダー契約を結ぶ堤麗斗(志成)ら日本の元世界王者やホープを絡ませ、イベント名を「リング・オブ・ザ・サムライ」としたのである。
井上の証言「ラスベガスより調整しやすい」
十分なファイトマネーが用意され、試合の模様はDAZN(日本ではLemino)で世界配信されるのだから選手にとっては魅力的だ。とはいえボクシング未開の中東での試合に、選手は不安もあったことだろう。ところが現地で話を聞くと、出場選手たちの調整はことのほか順調に進んでいるようだった。井上の感想が彼ら共通の思いだった。

