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「決勝にも出ていない選手が」SNSの言葉に傷つくことも…女子ハードル・中島ひとみ(30歳)が振り返る“注目度急上昇の今季”「支えになった夫の存在」
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加藤秀彬(朝日新聞)Hideaki Kato
photograph by(L)Kiichi Matsumoto、(R)Wataru Sato
posted2025/12/30 11:02
世界陸上で準決勝進出を果たすなど今季、大躍進を遂げた中島ひとみ。一方で、話題になったことでSNS等では厳しい言葉も目についたという
しかし、結果は13秒17、3月のオーストラリアでも13秒33。納得のいく結果ではなかった。でも試合は待ってくれない。帰国後も、息の詰まるようなレースが続いた。
4月の織田記念は、ポイントが高い5月のセイコーゴールデングランプリ(GGP)に出るために落とせない大会だった。
「ウォーミングアップしていても全然笑えなくて、1週間とか10日前からずっと試合のことを考えて、ずっと張り詰めていました」
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プレッシャーの中で織田記念を12秒93で初優勝。狙い通りに出場を決めたGGPでは12秒85まで記録を伸ばした。
7月の日本選手権では、1000分の3秒差で2位。初の表彰台に立ち、3位以内で獲得できる念願の「ライオンメダル」を獲得した。それでも、標準を突破できなかったため気は休まらない。「こんなに悔しいなんて自分でもびっくりしました」。
大会が終わると、すぐにスマホで次の試合を探していた。海外の条件のよい大会を調べ、2週間後にはフィンランドへ飛び立った。
苦手だった海外遠征で…世界陸上の参加標準を突破
過去の海外遠征はいずれも13秒台。「大失敗」がほとんどだった。飛行機での長時間移動や時差で体が疲弊する。走っても踏ん張りがきかず、後半まで体力がもたない感覚があった。だから、フィンランドでは調整方法をがらりと変えた。ウェイトトレーニングを5日前から3日前に変更。普段ではあり得ない練習量で強い刺激を入れた。そして、ついに12秒71をマークして参加標準記録を突破。世界陸上への切符をつかんだ。
9月、5万人超で埋まった国立競技場。夢に見た舞台を準決勝まで駆け抜けた。レース後は、ほっとしたような、やりきったような充実感に満ちた表情をしていた。
「今まで感じたことのない歓声を耳にして鳥肌が立ちました。初の代表を自国で、応援してくださる方々に見せられたのが本当に幸せでした」
急激な注目度の高まりには代償もあった。世界陸上後、SNSやネットニュースで飛び込んできた言葉の数々だ。

