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「決勝にも出ていない選手が」SNSの言葉に傷つくことも…女子ハードル・中島ひとみ(30歳)が振り返る“注目度急上昇の今季”「支えになった夫の存在」 

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加藤秀彬(朝日新聞)

加藤秀彬(朝日新聞)Hideaki Kato

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photograph by(L)Kiichi Matsumoto、(R)Wataru Sato

posted2025/12/30 11:02

「決勝にも出ていない選手が」SNSの言葉に傷つくことも…女子ハードル・中島ひとみ(30歳)が振り返る“注目度急上昇の今季”「支えになった夫の存在」<Number Web> photograph by (L)Kiichi Matsumoto、(R)Wataru Sato

世界陸上で準決勝進出を果たすなど今季、大躍進を遂げた中島ひとみ。一方で、話題になったことでSNS等では厳しい言葉も目についたという

 中島は世界陸上の準決勝のスタート前、鬼滅の刃のキャラクター「猗窩座」のポーズを披露した。試合前、気合を入れるために見ていた映像をまね、少しでも緊張をほぐしたいと思っていた。

 ところが――。SNSにはこんな言葉が並んでいた。

《決勝にも出ていない選手が》

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「『準決勝落ち』という表現もそうですけど、そういう風に捉える人の言葉には傷つきました。私には中学校で全国優勝して、その後ずっと日本代表をめざして入れなかった15年間がある。そういう背景を知ってもらえず、その瞬間の一部で判断して傷つく言葉を並べられたのはつらかったです。私は、まずは世界陸上に出たことがうれしかったし、出たからこそわかる感情があると思っていました」

 髪形やメイクへのこだわりは、今までと変わらないこと。注目を浴びたことで、その容姿についても過度に言及された。何げない自分のSNSの投稿に、過激なタイトルをつけて記事化されることにも、心が疲弊した。今では、ニュースに関するアプリは全て削除しているという。

 インタビュー中、シーズン中の葛藤を思い出し、涙がにじんだ。

「アスリートは表で輝いている姿だけが見られるけど、裏にはいろんな葛藤や悩みがある。私たちが思っていることは世に出さないと全くわからないから、こういう場もすごくありがたいんですよね」

激動の1年間…支えてくれた夫の存在

 激動の1年。誰より支えてきたのは夫だ。中島は7月の日本選手権後、男子400mH選手の豊田将樹(富士通)と2023年に結婚していたことを明かした。

 当初は発表する予定ではなかった。が、初めて日本選手権で2位に入り、自分を支えてくれた存在について説明するとき、豊田を抜きには説明できなかったという。

「彼がいないとふんばれていなかったと思います。今まで経験したことのないシーズンで、気持ちも追いつかなくて。彼は(2019年の)世界陸上に出て、オリンピックの標準も突破して出場を争った。その経験を元にかけてくれる言葉がすごくうれしかった」

 世界陸上の前、毎日「楽しみな」と言ってくれた。それが一番の救いだった。

【次ページ】 世界陸上を経て感じた「これで終わりたくない」

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