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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「後の世界王者に勝利、一時は世界7位に」“天才二世ボクサー”と呼ばれた内藤律樹34歳は今…「生き残りをかけた戦い」オーストラリアでの挑戦に密着
text by

関根虎洸Kokou Sekine
photograph byKokou Sekine
posted2025/12/26 17:02
元日本・東洋太平洋王者の内藤律樹。2024年12月、石川町のE&Jカシアス・ボクシングジムにて
しかし後のIBF世界スーパーフェザー級王者・尾川堅一に連敗したことで2階級上のスーパーライト級に転向する。2018年に東洋太平洋タイトルを獲得し、再び世界ランキングに名を連ねてタイトル獲得を目指していたが、5度目の防衛戦で麻生興一に敗れて王座から陥落した。一時は引退を示唆していたが、スパーリングパートナーとして訪れたオーストラリアで現役復帰を決意すると心機一転オーストラリアへ移住して、もう一度、世界を目指して歩み始めていた。
試合1カ月前に本人から“ある電話”
プレスカンファレンスの会場へ向かうピックアップトラックの中で、私はリッキーが口にした作戦に思いを巡らせていた。
ハグラー対ハーンズの一戦は、1ラウンドから先制攻撃を仕掛けたチャンピオンのハグラーが、初回からスリリングな打撃戦に持ち込み、「ヒットマン」のニックネームを持つ挑戦者のハーンズを3ラウンドにノックアウトしている。世界中のボクシングファンの記憶に深く刻まれる衝撃的なノックアウトだった。
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本来はスピードとフットワークを活かした技巧派タイプのリッキーだが、今回はハーンズ戦のハグラーのように1ラウンドから仕掛けるというのだ。
「6ラウンドしかないので、最初から速いリズムで攻めて、最後まで手を出し続けるイメージです。6ラウンドを攻め続けるスパーリングも出来るようになりました」
12回戦の試合経験も豊富なリッキーだが、今回の試合は6ラウンドで行われる。またこれまで戦っていたスーパーライト級(63.5キロ)から、さらに2階級上のスーパーウェルター級(69.8キロ)でリングへ上がることになった。
リッキーから電話があったのは、試合の1カ月くらい前だったろうか。大事な要件がある時はメッセージではなく、決まって電話がかかってくる。
「今度の土曜日にリアム・パロとスパーリングが決まったんです」。
パロは東洋太平洋スーパーライト級王者だった頃のリッキーが、自ら「この選手と戦ってみたい」と名指ししたことのあるオーストラリア人ボクサーだった。その時に私もリアム・パロについて調べたことがある。しかし2021年12月に行われた5度目の防衛戦でタイトルを失ったリッキーが、パロと戦うことはなかった。


