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「MLBは日本をATMだと思っている」WBC誕生の重要人物が明かす“地上波放送が消えた”本当の意味…大谷翔平けん引の野球人気「今がピークだと考えている」
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水次祥子Shoko Mizutsugi
photograph byNaoya Sanuki
posted2025/12/18 17:00
過去最高の盛り上がりを見せた前回WBC。地上波放送が消える今大会はどうなる?
WBCが誕生するまで読売新聞社文化事業部の一員としてMLB側との交渉に当たり、MLBのビジネスを熟知しているコウタ氏に話を聞いた。
「MLBは日本をATMだと思っている」
まずこの決定の根底には、大谷翔平という大きな存在が深くかかわっているという。
「大谷君が引っ張る野球人気は今がピークだと、WBCの主催者は考えています。ショウヘイ・オオタニは二度と出てこない。第二のヨシノブや、第二のロウキは出てくるでしょうが、ショウヘイ・オオタニは絶対出てこない。だから、今やっておかなきゃ。大谷君も、もう31歳だし、この後、何があるかわからない。それを考えると、今、稼げるだけ稼ごうということでしょう」
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幼少の頃から海外生活が長いため英語が堪能でソフトバンクや西武、そしてヤンキース、メッツ、代理人事務所ワッサーマンなど日米の野球界で長年仕事をしてきたコウタ氏は、そう断言した。ドジャースとカブスが来日して行われた今年3月のMLB東京開幕シリーズでは米スポーツ専門テレビ局ESPNのコーディネーターとしてクルーとともに取材をしていたそうだが、そのときに目の当たりにした東京ドームの光景で、大谷パワーを確信したという。
「ドームに隣接する場所にグッズ売り場の大きなスペースがあって、そこにドジャースグッズを求めて大行列ができていましたよね。その光景を見てクルーの米国人たちがみんな驚いていました。MLBはもう、日本をATMだと思っていますよ」
「WBCで野球の普及」はどこへ…?
ただしMLBは、WBCという国際大会が創設された当初から、拝金主義的なビジネスをやろうとしていたわけではない。野球を世界的に普及させたいという、確固たるビジョンを持ってスタートしたプロジェクトだった。
その構想がいつ、どこで始まったのか。コウタ氏は2000年春、読売新聞社の上司とともにニューヨークのMLBオフィスを訪ねたときが始まりだったと回想している。日本での開幕戦について当時のMLB国際部トップのポール・アーチー氏と会議を行い、それが終わったとき先方がこう切り出してきた。
「ところで、こういうのはどう思う?」
それは、野球の国際大会開催の可能性についての相談だった。
〈つづく〉

