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「その時、思いが芽生えたのかな」市川華菜34歳が明かす“まるでドラマ”な結婚秘話…苦しむ元100m日本王者同士が結ばれた“深いラブストーリー”
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矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAFLO/本人提供
posted2025/12/19 11:05
2022年に佐分慎弥さんと結婚した市川華菜さん
「競技を終えた後の人生のほうが長いから」
引退後も体調は良好で、そのため妊娠出産がスムーズだったという。
中京大学のコーチとして女子選手を指導する立場になっている今は「まずは婦人科医師に相談することを推奨する」など、女子学生が相談しやすい環境を整えている。
「生理痛が酷い、経血が多い、生理が来ない、体脂肪率が低いという学生には必ず婦人科に行って一回診て貰うように勧めています。やはり、競技を終えた後の人生のほうが長いし、子どもを作りたいと思ったときにそれが影響してしまったらかわいそうですから。産婦人科に行くのに抵抗がある子は多いですが、全然そんなことないよと言っています」
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日本の陸上界には女性指導者が数えるほどしかいないのが現状だが、産婦人科の医師による指導や啓蒙は少しずつ広がっており、生理の問題をみんなで共有する流れは進んでいる。
2歳児の子育てと陸上部の指導を両立する日々
現在、夫の佐分さんは春日井市で健康指導士をやっており、家庭では夫婦で助け合いながらそれぞれができる時間に家事を分担してこなし、保育園にも預けながら育児をしている。市川さんは子どもが眠りに就く夜8時半頃に一緒に寝るといい、睡眠時間はしっかりとれているという。
それにしても現役時代に自分一人へ全集中していた毎日から、育児はもちろん、陸上部の約30人の女子部員に目を配る真逆の立場になったのはどれほど大変なことだろう。けれども市川さんはにこやかな顔でこのように言う。
「学生全員が子どもだと思えば、可愛い娘たちがたくさんいると思えるんですよね。それに大学生は私がいなくても大人。手が掛かることは全然ありませんという感じです」
では、2歳のお嬢さんが今夢中になっているものは何?
市川さんによるとミニーちゃんや、虫の図鑑や、UMA(未確認動物)の図鑑。「ちょっと変わっているんですよ」と笑みを浮かべながら、このように続けた。
「娘には娘がやりたいことをやらせたいし、私は娘と一緒に勉強して、疑問に何でも答えられるように一緒に考えたいなと思っています。そういうのは彼がすごく得意なことでもありますね」
力強く美しいスプリンターを訪ねて話を聞いたら、想像を遥かに超える深いラブストーリーにも遭遇させてもらった。
市川さんはこれからもきっと人の心の深いところまで見つめながら選手を指導していくに違いない。その歩みがこのうえなく楽しみだ。〈インタビュー第1回、第2回も公開中です〉


