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「その時、思いが芽生えたのかな」市川華菜34歳が明かす“まるでドラマ”な結婚秘話…苦しむ元100m日本王者同士が結ばれた“深いラブストーリー”
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矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAFLO/本人提供
posted2025/12/19 11:05
2022年に佐分慎弥さんと結婚した市川華菜さん
「もう辞めさせてあげたい」佐分さんからの言葉
市川さんは自分が何らかの成功をつかむことによって、一緒に歩む佐分さんのトラウマが消え、なおかつ佐分さんが次の領域に足を踏み入れられるようになるのではないかとも考えていた。
「ケガの辛さをどう克服するか、それを分からないまま人に教えることは難しいのではないか。そんな風にも思いました。なぜなら、どん底を味わってから克服した時に見える景色は、大学生の時に結果を出した時のような単なる嬉しさだけとは違って、本当に感謝しなきゃいけないことがそこでやっと全部見えたというのが、私が感じたことだったからです」
市川さんはとてつもなく大きな器量と度量の持ち主だった。
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そして、付き合いを深めていく中で、市川さんは佐分さんのパーソナリティーへの理解も深めていた。
「彼の大学生の時の写真を見るとすごくやんちゃなイメージがあるのですが、根はめちゃくちゃ真面目で、一途で、見た目とちょっと反してる部分があるんです」
そんな風に言って、チャーミングな目を一層輝かせる。
2021年9月、引退レースとなった全日本実業団選手権。
「彼はもう辞めさせてあげたいとずっと言ってくれていました。頑張れとは言わずに辞めさせてあげたいと。私自身、本当にそれくらいきつかったので、だから本当に二人ともお互いにやりきるところまでやったのかなと思います。本当にお疲れ様でしたという気持ちでした」
アキレス腱の痛みに耐え、試合で走るのが怖くて震えてしまうこともあった日々に、一番近くにいてくれたのが佐分さん。市川さんは「一緒にいてくれて本当にありがたかったです」と感謝している。
2023年の夏に女の子を出産
市川さんは結婚から1年数カ月たった2023年夏に出産。安産だったという。
実は現役時代の市川さんは生理痛が酷く、「試合にも影響してしまうし、特にマイルリレーを走ると立ち上がれなくなってしまう」という悩みを抱えていた。
市川さんが400mを本格的にやるようになったのはロンドン五輪後の2013、2014年頃。当時はちょうど東京五輪の招致が決まった時期で、医科学分野でのアスリートサポートが拡充しつつあったタイミングだ。また、産婦人科の領域では安全性の高い低用量ピルが開発され、女子アスリートに対して「生理痛や生理不順を放置しておくのは危険であるという認識」を啓蒙する活動が広がっていた時期でもあった。
市川さんは婦人科医師に相談する機会があり、その頃から低用量ピルを飲むようになったことで生理周期が安定するようになり、生理痛がなくなってからはパフォーマンスも上がった。
「400mを走れるようになったのも、低用量ピルをきっちり用意して飲むようになったから。以前のピルは飲むとホルモンバランスに影響が出たりむくみやすくなって体重が増えたりしていたのですが、低用量に改良されてからはそういうことはなくなりました」


