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今井達也はなぜ“ドラフト単独指名”だったのか? じつは中日も直前まで1位希望だった指名ウラ側…直後に森繁和から渡辺久信に電話「ナベ、ふざけんなよ!」
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渡辺久信Hisanobu Watanabe
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/12/17 11:00
来季からメジャーでプレーする今井達也
当時の作新学院高には、明大からDeNAに入団する入江大生もいた。入江も本格派の好投手だったが、うちのスカウト陣は今井を推していた。ただ、春の大会を見に行っても、今井は背番号18を着けていて、試合ではまったく投げない。ブルペンで投げるところを少し見ることができたが、力を入れていないので、「ヒジの使い方が柔らかい」というぐらいしか評価できなかった。
「早く負けてほしい」スカウトの本音
評価が確固たるものになったのは、夏の栃木大会の1回戦だ。先発した今井はストレートもスライダーもキレ味抜群で、4回7三振の快投を見せた。ほかの球団のスカウトの姿もあったが、決定権のある編成部長やシニアディレクターが来ていたのは西武だけだった。球場に行くときは、「決定権を持った人は来ているか」を必ず探すようにしている。それが球団の本気度に表れるからだ。私は体も大きいので、すぐに存在をばれてしまうが。本当に申し訳ない話だが、このあと早めに作新学院が負けていたら、1位ではなく3位や4位で獲れていたかもしれない。お気に入りの選手ほど、「早く負けて、ほかのスカウト陣の目に触れないでほしい」と願うのは、ほぼ全員のスカウトが思うところであろう。
〈つづく〉
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