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英記者が絶賛なぜ?「正直、度肝を抜かれた」拓真でも天心でもなく…29歳日本人ボクサー評価急上昇の理由「金を積まれても、戦いたいと思わないレベル」
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杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byHiroaki Finito Yamaguchi
posted2025/12/01 11:06
元世界王者を寄せ付けなかった坪井智也(29歳)。試合後、カルロス・クアドラス(左)は現役引退を表明している
アマチュア時代に磨かれた卓越した技巧に加え、優れたジャブ、驚異的な高速連打はすでに世界水準を超えている。グレイ氏は、その完成度の高さをこう語る。
「ハンドスピードは驚異的だったし、すべての動き、強度――とにかく、あのパフォーマンスには本当に圧倒された。華麗なまでの強さだった。テンシンは初の世界戦で経験不足を露呈したが、ツボイはまだプロ3戦でも明確な違いがある。テンシンは総合格闘技出身だったが、ツボイはボクシングのアマ世界王者だ。彼を“ノービス(経験の浅い選手)”とは呼べない。たとえばワシル・ロマチェンコやパーネル・ウィテカーがプロに転向した時も、彼らを『プロの初心者』なんて呼ぶのはナンセンスだった。ツボイもまたそういったカテゴリーに入るのだろう」
特異な才能に加えて“度胸”もある
ここで4階級制覇王者のウィテカー、世界最速で3階級制覇を果たしたロマチェンコといった名前が出てくるのだから、坪井の才能に魅せられたグレイ氏の興奮ぶりが伝わってくる。その分かり易いボクシングのスキル、スピードとともに、筆者が個人的に驚嘆させられたのはその度胸の良さだ。元世界王者の相手を完全に呑んでかかっているのは明白で、頻繁に笑顔を浮かべるほどにリラックスしていた。仲のいいWBA世界バンタム級王者・堤聖也は、『7ラウンド目前にこっちに気付いて手振ってきた。 デビュー戦でも試合中で振ってきた。 怖い』とXに記していたくらい。
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「切羽詰まっている感覚は何もなかった。スパーリングをやっているような感覚。(観客席の)人が何を言っているかが理解できるくらい、頭の中はクリーンだった」
アマ時代に世界各国で戦った経験が大きいのか、試合後の会見でのそんな言葉もまったく虚勢には感じられなかった。その場慣れ感はプロ3戦目のボクサーとは到底思えず、緊張から力を出せないといったようなことはありえないのだろう。

