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井上拓真は「この勝利で“尚弥の弟”からブランドの意味が変わった」元世界王者のプロモーターがホンネ評価「次に誰と戦うのか? みんな興味が湧く」

posted2025/11/29 17:00

 
井上拓真は「この勝利で“尚弥の弟”からブランドの意味が変わった」元世界王者のプロモーターがホンネ評価「次に誰と戦うのか? みんな興味が湧く」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

試合前には那須川有利とも予想していた伊藤雅雪氏だったが、井上拓真の対応力と意地に感嘆したという

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杉園昌之

杉園昌之Masayuki Sugizono

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Takuya Sugiyama

11月24日、トヨタアリーナ東京で行われたWBC世界バンタム級王座決定戦は、同級2位の井上拓真(大橋)が、同級1位の那須川天心(帝拳)を3-0の判定で下し、13カ月ぶりに王座返り咲きを果たした。勝敗を分けるポイントはどこにあったのか——。現在は『TREASURE BOXING PROMOTION』の代表などを務める伊藤雅雪に、元世界スーパーフェザー級王者、プロモーターの視点で試合を振り返って、この勝敗が持つ意味までを読み解いてもらった。〈全2回の1回目/つづきを読む

 伊藤は正直に明かす。戦前の予想は元王者を含む世界ランカーたちに連勝し、成長著しい格闘技無敗の那須川天心だった。キックボクシングからボクシングに転向し、2023年4月のプロデビュー以来、わずか8戦目で世界戦にたどり着いた、その勢いを買っていたのだ。

那須川優位と予想していたが……

「シーソーゲームになり、天心が少しの差でポイントを重ねて、徐々に抜けていくのかな、と思っていました」

 立ち上がりは予想どおりだった。井上拓真のパンチは空を切ることが多く、カウンターも被弾。伊藤は那須川がこのまま流れに乗っていくことを頭に思い浮かべた。だが、緊迫する空気が漂うリングサイド近くで観ていると、井上の体からにじみ出る気迫もひしひしと感じた。幼少期から井上家で兄・尚弥と磨いてきたボクシング技術以上に、拳に気持ちが乗っていたという。

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「『引退も考えた』というコメントを聞いたとき、もう一度ハングリーな気持ちをつくるのは難しいのかもと思っていたのですが、拓真は違いましたね。この一戦に懸ける意地のようなものが伝わってきたので」

 そして、迎えた3回。井上の攻めの姿勢に釘付けになる。最初はガードを上下に動かし、フェイントを駆使しながら遠い距離で戦っていたが、いち早く作戦を変更したことに舌を巻いた。

井上が素早く変更した戦い方とは

「2ラウンドで判断し、すぐに変化させましたから。一歩距離を縮め、テンポが速くなった。アジャスト(順応)するのは早かったですね。ここで試合を動かしてやるぞ、という必死さが見えました。ガードを少し高くしながら前に出て、あらゆる角度からパンチを繰り出していた。

 相手と同時に打つと、スピードで勝る天心の一発が当たるのですが、ここから拓真はガードで相手のパンチを受け止め、ときにはうまく避けて、ワンテンポずらしながら打っていた。天心の構える腕の隙間、隙間を狙って当てていたと思います」

【次ページ】 尚弥のアドバイスが飛ぶ

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