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ボクシングPRESSBACK NUMBER
井上拓真は「この勝利で“尚弥の弟”からブランドの意味が変わった」元世界王者のプロモーターがホンネ評価「次に誰と戦うのか? みんな興味が湧く」
text by

杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byTakuya Sugiyama
posted2025/11/29 17:00
試合前には那須川有利とも予想していた伊藤雅雪氏だったが、井上拓真の対応力と意地に感嘆したという
尚弥のアドバイスが飛ぶ
伊藤の目の前に座る尚弥からは大きな声が飛んでいたという。「このほうがいいぞ、前に出たほうがいい」と。それに呼応するように弟の拓真は、ぐいぐい攻めていく。リングの上で戦う本人にその助言はしっかり届いていた。父・真吾トレーナーの指示だけではなく、「2人の声はずっと聞こえていた」と試合後に明かした。伊藤は大橋陣営、井上家の結束力の強さを感じ取っていた。
「拓真サイドはチーム一丸となり、戦っているなって。陣営は徹底して対策を練り、天心に勝つためだけに集中し、準備してきたのが見えました。うまくいかなかったときのパターンを考え、練習に落とし込んでいたのかなと。ワンパターンにならなかったのが良かった。本来、試合の途中で距離、戦い方を変えるのは簡単ではないんです。そこは拓真のキャリアがあったからこそだと思います」
7回、8回は井上が少しペースダウンし、半歩下がって距離を取るシーンも増えた。ハイテンポで攻め続けるのは、さすがに体力的に難しい。12ラウンドをマネジメントした小休止のように見えた。8回はジャッジ2者が那須川にポイントを与えているものの、試合の流れが変わる気配はなかったという。
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「拓真が意図的に距離を取ったと思います。天心の圧で下がらされたという印象は受けなかったですね。むしろ、主導権を握っていたのは拓真のまま。陣営からは『ガードを高くして、前だよ』という指示が飛び、9回からは元の距離に戻りました」
終盤でなおも攻めに出た井上
伊藤が感嘆したのは、11回の開始から見せた攻めの姿勢。那須川に頭をくっつけ、果敢に打ち合う。ショートの左フック3連打から立て続けに右アッパーのトリプルを突き上げ、会場を沸かせた。ハイライトと言っていい場面をしみじみ振り返る。

